ざくざくと土を掘っていると、その中にきらりと光るものを私はみつけた。
そっと手に取り、土を落とす。
それは、片手の手の平にすっぽりと納まるくらいの水晶の塊だった。



(ありがとう…ありがとう…)



どこかで、そんな声が聞こえたような気がした。

私は水晶を懐におさめ、スコップを返そうと玻璃の姿を探したが、見通しの良い水晶の丘のどこにも彼女の姿はみつからなかった。
仕方なく、私はスコップを木の根元に立て掛け、そのまま喫茶店へ向かった。



店は開いているようだったが、外から見た感じではお客はまだ誰もいない。
扉を押すと、やはり鍵はかかっていなかった。
コーヒーサイフォンの湯が滾り、店内には人の気配がするのに店主はいない。

店の奥に、何か用でもあったのかと思いながら、私は、カウンターの前に座った。
しかし、やはりあの席が気になる。
店の奥のあの席が…
私は、立ちあがり、奥の席に向かった。



(思えば、この椅子が始まりだった…)



埃にまみれたあの椅子に座った時から、この不思議な夢が始まったのだ。



(もしかしたら…)



ならば、この椅子に腰掛ければ、この夢は終わるのではないか?
ふと、そんな想いにかられ、私は椅子に腰掛けた。





一瞬、頭の中が真っ白になったような気がして目を瞑る…




目を開いた瞬間、私は違う場所にいた…
いや、夢から覚めたのだ。



「お帰りなさい。」

私の目の前には、湯気を立てるコーヒーと老主人の顔があった。