「……わかったよ…じゃあ、本屋へ案内しておくれ。」



私は瑞月と手を繋ぎ、細い路地を裏通りに向かった。
子供相手にむきになっていた自分を省みながら…
この夢が私にどうしてもそうさせたいと望むのならば…それで良い…
夢の願い通りにしてやろう。

私と瑞月は、以前と同じようにあの古ぼけた本屋を訪ね、そこで真っ白な絵本を見…そしてその後、あの祠を訪ねた。
祠では、ほむらと呼ばれる神子の少女と出会い、そして瑞月と彼女が短い会話を交わした後に山道を降りてくる。
山道を降りる途中でなぜかその道は水晶の丘へ続き、私はそこで玻璃と名乗る女性と出会う…
そんなことをただ何度も何度も繰り返すばかり…
繰り返すとは言っても、会話を少し変えたりすることはあった。
大筋を変えさえしなければ、その程度のことは許されるようだ。
しかし、何度も何度も山道を登ったりしているのだから、私の体力にも限界が来てしまった。
それが、何度目の繰り返しのことだったかの記憶はない。



「じゃあ、帰ろうか!
急がないと暗くなるね!」

瑞月は山道をまるで転がるような勢いで駆け下りて行く。



私はのろのろとその後を歩き出したが、疲れと睡気で足元さえおぼつかない。



(少し休むか…)



私は、木の根元にもたれかけ目を瞑った。
目を瞑ったと同時に、私は眠り込んでしまったようだ。
夢の中で眠るというのもおかしなものだが、目が覚めた時にはなんとなく気分がすっきりとし体力がよみがえっているような感覚を感じた。
しかし、あたりにはなに一つ変わった様子は見受けられない。
私はゆっくりと起き上がると、山道を降り始めた。
これから、また水晶の丘に出て玻璃に出会い、町に向かってそこで瑞月に出会い本屋に案内され…
その繰り返しが始まるのだと考えるとうんざりしたが、それも仕方のないこと。
この夢が飽きるまで、私はそれを繰り返すしかないのだろう。



……しかし、そうではなかった。
山道を降りきった時に私が着いたのは、水晶の丘ではなく町のはずれだったのだ。
ついに、繰り返しが終わったのだ。