博士と秘書のやさしい恋の始め方

後日、私たちは仮装した駿くんと自信作のお化けカボチャを見に行ったのだけど――。

「何なんだ、あの仮装は……」

「マッドサイエンティスト、だそうですよ」

駿くんのいでたちは、ブカブカの白衣に黒縁眼鏡。そして、背中には紙で作った大きな注射器を背負っているという……。

力作のお化けカボチャと集合写真を撮る園児たちを遠巻きに眺めながら、私はちょっと不思議な気持ちでいた。

彼も私も親でもないのに、わざわざこんなところまで来て……。

明らかに場違いなふたり、なのに――居心地の悪さは感じなかった。

傍らでは、沖野先生と三角さんがカメラを片手に熱心に可愛い子どもたちを撮影中だ。

おそらく、今こうして集まっている保護者たちは所内の人がほとんどだと思う。

いつか、彼と私も――ここにいるお父さんやお母さんたちのように、仕事の合間をぬって“我が子”の可愛い姿を見にかけつけるようになるのだろうか?

「駿くんて、やっぱり靖……田中先生のことが大好きなんですね」

「というと?」

「だって、先生のまねですよね? マッドサイエンティスト」

「だとしたら、彼にじっくりと事情を聞く必要があるな」

「マッドサイエンティストとは心外な」と苦々しく言いつつ、なんだか嬉しそうな靖明くん。

彼が今何を思っているのか。それは聞くまでもない気がした。

いつかきっと私たちもこんなふうに――そう、彼もまた同じ気持ちでいてくれているのが十分に伝わったから。

紅葉の見頃にはまだ早いけれど、所内の木々たちも季節の移ろいを映してその表情を変えていた。

爽やかな青空の下、木の葉がさわわと柔らかに揺れる。

賑やかにはしゃぐ子どもたちと、その姿に目を細める大人たちを、秋色をした穏やかな風が優しくやさしく撫でていった。



(おわり)