それは十月も半ばを過ぎた頃だった。

「あっ、そうだ。靖明くん」

「なんだろう?」

金曜日の夜、いつものように彼のうちで寛いでいる。

お風呂でリフレッシュした体にパジャマを装備。

お供には、よく冷えたビールとチーズ鱈もひかえている。あ、それから柿ピーも。

リモコン片手に、彼が録画してくれた猫番組を視聴する私と、買ってきたばかりのSF小説を読み耽る彼。

仲良く並んでソファーに座り、それぞれに秋の夜長を満喫中。

そんな折、ふと思い出した。

まったく、こんな大事な報告を忘れていたなんて。

「私、男の人からお手紙をいただいてしまいました」

「は?」

私はひょいっと立ち上がると、バッグの中から封の切られた真っ白い封筒を取り出した。

「こちらがその手紙です」

「いや、それは……」

何食わぬ顔で「さあどうぞ、お読みあそばせ」と封筒を差し出す私に、あからさまに彼が戸惑う。

その表情が――可愛くって、おもしろい。

「読まないんですか?」

「いいのだろうか……」

「あ、別に私はどっちでもいいですよ。無理に読んでもらおうなんて――」

「読む」

あ、読むんだ。引っ込めようとした封筒を、彼が慌てて取り上げる。

そっか、気になるんだ? 気にしてくれるんだ? 

もう、にわかに動揺する彼の可愛らしいこと。そして、彼の心を弄んでニヤニヤする私の意地悪いこと。