博士と秘書のやさしい恋の始め方

彼は決まって私のことを猫のようだと言う。

「やっぱり猫だな」

ほらまた、そうやって……。そして、恥ずかしながら違うと言い切れないのがつらいところ。

それもこれも――みんなみんな彼のせい。彼が私に甘すぎるくらい、甘いから。

すりすりとすりよる私の髪を、彼がしっとり優しく撫でる。彼に触れられるのは、安心するし癒されるし、とてもとても気持ちがいい。

だから私は彼に服従してしまう。それこそ、ごろんとしてお腹を見せちゃう猫みたいに。

だって、なんだかちょっと悔しいけれど「もっと、もっと……」というその気持ちには抗えなくて。

私はすっかり彼のまえでは無防備だ。なのに? だから? そんな私に彼はちっとも容赦がない。

溺れるほどに愛されては苦しくなって、弄(もてあそ)ぶように突き放されては切なくなって。

彼の余裕に翻弄されるのは、恥ずかしいのに気持ちがよくて、悔しいけれどすごく幸せ。

あふれるほどに与えられるその快楽に、猫のように幾度もからだをしならせる。

ときおり甘えるように切ない声で鳴きながら、私は飽きることなくじゃれ続ける仔猫のように、夢中になって可愛がられた。

「やっぱり猫かな……?」

「確かに猫だな」

そんな会話をしながら――私たちはひとつになって、ふたりの関係を確かめ合った。

遊び疲れたような、少し名残惜しいような、そんな心地よい疲労感に包まれながら、私は彼がベランダから戻ってくるのを待った。

今夜はもうしっかりパジャマを着ているし、うっかり寝てしまっても大丈夫。いつかのように、起きたら裸!?なんてことにはならないから。

「待たせてすまない」

ちょっと一服から戻っきた彼がベッドにごろりと横になる。そんな彼に私はすかさずくっついて、ちょっとだけねだるように甘えて言った。

「ちょっとだけ話してもよいですか?」

「もちろん」

ま、そう言ってくれるのはわかっていたのだけど。

「私ね、靖明くんのことをいつから好きだったんだろうって。なんとなくちょっと考えてみたんです」

「それは興味深い。で?」