博士と秘書のやさしい恋の始め方

偉そうに言いながらも、心はもう半分くらいとろけている。

甘いお茶で骨抜きにされた私は、猫のサバ白みたいにぐんにゃりとベッドに体を横たえた。

「はにゃー」

「今日はさすがに少し疲れたな」

「少しですか?」

「いや、訂正。かなり疲れた……」

「ですよね……」

ふたりしてベッドに寝転がりながら、他愛のない会話でまったりする。

彼のうちの寝室はすごく落ち着く。休日の昼間なんかも、こんなふうにベッドの上でふたりしてゴロゴロしたり、ダラダラしたり。

このベッドは本当に心地がよくて癒される。ベッドの上で“何か”するのもいいけれど、“何もしない”をするのもいい。

ふいに子どもじみた衝動にかられた私は、彼の肩をポンポンポンとリズミカルに三度叩いた。

「ヤス、ヤス、ヤスッ」

もちろん、叩いたといっても痛くもかゆくもない強さだし、何の意味も脈絡もない遊びだった。

でも、彼にとってはそうじゃなかったらしい。

「…………さり、さり、さり?」

なんとも自信がなさそうに私の肩を叩くその表情が可愛すぎて、私はキュン死か悶え死にしそうになった。

「すまない、これであってるだろうか……?」

いや、あってるだろうかも何も……。

「いちいち難しく考えないでくださいっ。ただの思いつきの遊びなのでっ」

「わかった。努力する」

いや、だから……そこ、ぜんぜん頑張るところじゃないのだけど。

彼のこういうところが愛おしくて仕方がない。

彼のこの魅力を、いったいどれほどの人が知っているのだろう? 

彼のことを誤解している人に、ちょっと知って欲しい気もしないでない。本当はこんなに気さくで可愛いところもあるんだよって。

けどやっぱり、私だけの秘密にしておきたい。秘密の宝物として大事に独り占めしたい。そっちの気持ちが強いかな……。

彼のことを「靖明くん」と呼べる唯一の女性の特権として。