博士と秘書のやさしい恋の始め方

けど、結果的に――話すことになったんだよね。

故意ではなかったにせよ、彼を私のひとりよがりに巻き込んでしまったのだし。

困惑させてしまったうえに、不愉快な思いまでさせてしまったんだもの。

きちんと事情を説明するのは、当然といえば当然のこと。

それでも、なかなか話せずまごまごしてしまったのは――彼が本当にそれを知りたがっているのか気になったから。

自分の過去をすべてさらけだして「受け止めてね」と押し付けるのは、それこそひとりよがりかも? そんな不安が頭をよぎって……。

決して隠しおおそうとしていたわけではないけれど、彼をやきもきさせてしまった。

けど――やっぱり、ちゃんと話せてよかった。

彼が考えなしの行動をした私を「バカだ」と言って叱ってくれたとき、すごく嬉しかった。

そして、嫉妬してくれていたんだと知ったとき――泣きそうなくらい嬉しくて、心が素直にときめいた。

「沙理、寝てる???」

「ん? 寝てないですよ」

パジャマ姿で戻った彼の声に、私はむくっと体を起こした。

「お茶、飲む?」

「飲みたいです」

即答する私に、彼はよく冷えた緑茶のペットボトルをひょいと差し出した。

けれども――。

「沙理?」

私はそれを受け取らず、ただ訴えるような目で彼を見上げた。

さて――彼は察してくれるだろうか? 横着な私のわがままを。

「お茶が飲みたいです」

と言いつつも、シーツの上にぺたんと座ったかっこうで、頑としてペットボトルは受け取らない。

そして、さらにしつこく上目づかいでじとーっと物欲しそうに彼を見る。

すると――願いは通じた。

聡明な彼はお茶を自分の口に含むと、そのままゆっくりと――私の唇に口づけた。

きりりと冷えたお茶が口移しでとろりと流れ込んでくるその感じは、想像以上に……ひどく官能的だった。

「これで正解?」

「正解です」