博士と秘書のやさしい恋の始め方

――あれ? 私、すっかり寝ちゃってた???

寝ぼけ眼で時計を見ると、朝の五時半をすぎたところ。

隣には先生の姿はなくて、まるで身代わりのようにミトコンドリアのぬいぐるみが置かれていた。

そうそう、そうでした、私はこの子に会うためにここへ来たんだよね、うん。

なーんて、本当はすっかりその存在を忘れていたのだけど……申し訳ない。

それにしてもおかしいなぁ、ちょっとうとうとするだけのつもりが……。

っていうか――私ってば何も着てないしっ、穿いてもいないじゃないっ。

すごく恥ずかしくて、すごく……びっくり。

今まで男の人と一緒に寝ても、こんなことはなかったから。

私、昨夜はきっとすごく安心しきっていたんだろうな。

そんなことを考えていたら、昨夜の先生とのあれこれがリアルに思い出されて胸がきゅっと熱くなった。

と、とりあえず……いいかげん何か着よう、うん。

なんだかもう、ひとりで思い出しドキドキ(?)している自分が気恥ずかしくて、私はそれを誤魔化すように、そそくさと下着をつけて、枕元にあったパジャマを着た。

先生はベランダの隅っこで煙草を吸っていた。

正確にいうと、咥え煙草で論文らしき資料を読んでいる、かな? 

履物がなくて出られない私は、戸口からひょこっと顔を出して声をかけた。

「おはようございます」

「おはよう」

先生は素早く煙草を消すと、ゆっくりとこちらへやってきた。

「よく眠れた?」

「はい、とっても」

「それはよかった」

先生の大きくて華奢な手が、私の頭をよしよしと撫でる。

この感じは、猫というより犬にするみたいかな? 

それでも私は猫のようにすり寄って、先生にじゃれるようにまとわりついた。

「ひょっとして、早起きしてお仕事していたんですか?」

「いや、たまたま早く目が覚めただけ」

「そうなんですか」

「で、一服しようとしたらそれが最後の一本だとわかって。朝飯の調達もかねてコンビニでも行こうかと」

「なるほど」