博士と秘書のやさしい恋の始め方

先生は私に甘すぎる。まさに猫かわいがりっていうのかな? 

もちろん悪い気はしない。でも、さすがにちょっと照れてしまう……。

ああ、なんて幸せで優しい時間なのだろう。

好きという気持ちと情熱と、先生はちょっとした冷静さを、私はわずかな恥じらいと愛嬌を、それぞれに持ち寄って作り上げるふたりの時間、至福のとき。

「沙理」

名前を呼ばれただけで、甘美な快感に心と体がぞくりとする。

本当にもう、私ときたら先生の言葉にいちいち敏感に反応するから……。

甘やかしたり甘やかされたり、大人だけに許された愛情表現を繰り返す。

歯止めなんてとっくのとうに壊れていた。

そんな私の脳裏に先生の言葉が蘇る。

「どうしようもなくなっているあなたを見てみたい」と……まるで快感を煽るように意味深に響く。

どうしよう。本当、どうしようもない。

こんなに……こんなに好きになっちゃって。

「沙理」

先生は優しい。そして、その優しさには容赦がない。

どうしようもなくなっている私の耳元で、先生は囁くように言った。

「もう我慢はしない」

これは「決して我慢をしてはいけない」という私に対する戒めなのか、それとも先生自身が我慢をやめるという宣言なのか。

どちらともとれるけど、どちらなのかはわからない。

でも……どちらでもよかった。もちろん、その両方でも。

先生の声色は穏やかなようで、どこか少し熱っぽくて、いっそう私をどうしようもなくかき乱した。

愛し合うことに本気で没頭したら、自分を飾る余裕などなくなってしまう。

情けないことに、私はそれをこの歳になって思い知った。

けど……それをわからせてくれたのが先生でよかった。

先生と触れ合って、先生を知って、そうして変わっていく今がすごく幸せだから。

私たちは身も心も寄り添い合って、重なって、つながって――そうして、この上ない幸福感とともに溶け合った。

それからもれなく、甘やかな余韻とともに、なんとも心地よい脱力感を分かち合った。