博士と秘書のやさしい恋の始め方

明かりを落とした寝室で、眼鏡を外した先生と抱き合った。

「応じる」とも違うし、「ただ受け入れる」とも違う。もちろん「演じる」ともぜんぜん違う。

私はただひたすらに、心のままに先生を求めた。

「猫みたいだ」

夢中になって甘える私の髪を、先生が愛でるように優しく撫でる。

「猫だなんて、私には可愛すぎるたとえです」

でも、こうして自分本位に振る舞うのは猫といえば猫なのかも。

キスをしては甘い吐息をついて、またキスをしては歯がゆい快感に身をよじらせる。

自分からすり寄って甘えておいて、歯止めがきかなくなりそうになると、ちょっと困って身を引いたり。

本当、勝手気ままな猫みたい。

私が猫だとすれば、先生は懐深い猫好きの飼い主かな? 

猫がじゃれるから飼い主がかまうのか。はたまた、飼い主がかまうから猫がしかけるのか。

飼い主が猫に振り回されているのか、或いは猫が飼い主の手のひらで転がされているのか。

たぶん……どっちもどっち?

「なんか……すごく楽しいです」

ちょっと恥ずかしかったけれど、正直な気持ちを伝えた。

だって、すごく嬉しかったから。

先生と触れ合っていると、とても安心する。だから、素直になれる。

私に求められているのは、期待どおりの反応でもなければ、魅惑的な女らしさでもない。

望まれているのは「何か」ではなく、ありのままの私だから。

そのことを、先生が言葉や態度で優しく教えてくれたから。

嫌われたらどうしようと不安がることもないし、どう振る舞って欲しいのかと期待を探る必要もない。

私は愛しさをこめて、先生に思いきり抱きついた。

「楽しくて、すごく嬉しいです」

「あなたは本当に可愛くておもしろい」

「おもしろい?」

「俺の中では最高の誉め言葉です」

先生はさらりと言うと「もうお喋りはおしまい」とばかりに私の唇をキスで塞いだ。