博士と秘書のやさしい恋の始め方

「ところで田中クン、そちらのかたは田中クンの彼女ですか?」

駿くんは妙に大人びた話し方をする年齢不詳な子どもだ。

語彙が豊富で少々理屈っぽい。

神林さんの話によると、年齢に不相応なとびぬけて高いIQを持っているのだとか。

そのせいか、或いは俺と同じ一人っ子というせいか、同年代の子ども同士で遊ぶより大人と話すことを好む傾向があるらしい。

そして、この俺も彼の友人のひとりというわけだ。

「俺の彼女です」

率直に答えた。

誤魔化しようもないし、またその必要もないので。

さて、山下さんは駿くんとどう対峙(?)するのか。

意地悪な俺は興味深く見守った。

「はじめまして、山下沙理といいます。田中先生がいるラボの秘書で、先生とおつきあいをさせていただいています。よろしくお願いします」

駿くんを子ども扱いするかどうか、そこが焦点だったのだが。

さすが、山下さん。

どこまでも俺の期待を裏切らない人だ。

「神林駿デス。いつも沖野がお世話になっています」

「駿くん、そこは“沖野”ではなく“母”というべきです」

「えっ。なるほど、勉強になりマス。山下サン」

このふたりの会話って……。

とりあえず、山下さんは駿くんに友人として認められたようだ。

そうこうしているうちに、神林さんと沖野先生がやってきた。

「駿! 駐車場でちょろちょろしちゃダメっていつも言ってるでしょ! って、山下さんじゃん!? ええっ、何? 田中クンと? はぁ~、なるほどねぇ」

沖野先生は駿くんをかがんでガシッとホールドしながら、俺たちふたりをじーっと見上げた。

「すまん、田中。駿がナンバー見ておまえの車を見つけちまってさ。で、探しに行くって姿くらまして……」

神林さんは迷惑かけて申し訳ないと恐縮した。

「駿くん、恐るべし記憶力ですね」

「暗記が得意なんだよな。ま、興味のあることに限ってだけどな」

「とりあえず無事に見つかってよかったです」

駐車場というのは信号もないし接触事故など起きやすい場所だからな。