博士と秘書のやさしい恋の始め方

ということで――。

「すみませーん。イキのいい段ボールありますかー?」

早速、段ボールを漁りに中央棟の総務課へやってきた。

「あいよー、ちょうど新鮮なのが入ってるよー。って、相変わらずだね、山下さん」

「どうもです。新里(しんざと)さんみたいにのってくれる人がいるときだけですよ」

新里さんは総務課きってのイケメン職員。そして、私の親友の婚約者だ。

「段ボールなら、そこの廊下の奥のほうだよ。畳んだやつが壁に立てかけるようにして重なってるから。お好きなものをどうぞ」

「ありがとうございます」

段ボール段ボール、と……。

私は廊下の隅であれやこれやと段ボールを物色し始めた。

そういえば――姐(あね)さん、元気にしてるかなぁ。

姐さんというのは、実家で飼ってる茶トラの猫で、流し目がお得意の熟女だ。

彼女、段ボールが大好きなんだよね。

乗ってヨシ、齧(かじ)ってヨシ、入ってヨシ。

猫って狭くて暗いとこ好きだもんね。

姐さんもよく箱ん中にすっぽりおさまってたっけ……。

そんなことを思い出しつつ、そこにある中で一番大きな段ボールをよいしょと開く。

そうして――。

「(あ、これ落ち着くかも……)」

姐さんよろしく、すっぽりおさまってみた。

こうして背中をまるめて膝を抱えていると、まるで胎児の気持ち。

いやその、胎児記憶なんてまるっきりないのだけれど……。

私、ちょっと疲れてるのかなぁ。まあ、異動したばっかりだし。

そういえば最近、片づけとか掃除ばっかりやってるなぁ。

整理整頓の鬼、テプラの鬼だもん。

メーカーさんから粗品もらいたいくらいだわ、って……何やってんだ、私は。

別にいいもんね、あやしいとか思われたって平気ですよーだっ、て――。

「何を遊んでいるんですか?」

「……(げげっ!?)」

ぜんぜん平気じゃなかった……。