なんだ周のやつ、得意げに自慢でもしたのかと思ったら言ってなかったのか。
俺にはいつも尊大な態度なくせに、意外と奥ゆかしいところもあるんだな。
「井原さんからは、看板の字を書いたのはあちらの神社の神職の方だとうかがったんですけど」
「その“神職の方”があいつです」
「ええっ!?」
さっきからいちいち驚きっぱなしの山下さんがおもしろい。
「神職って商売柄といってはなんですが、祝詞だのなんだの筆で字を書けるのが必須らしくて。あいつも子どもの頃から書道をやっていて心得があるんです」
「そうだったんですね」
「ところで、さっきの“ええっ!?”は、ぜんぜん神職に見えないという“ええっ!?”ですか?」
「い、いえっ、決してそんなことは……」
慌ててしどろもどろになる彼女の可愛いこと。
だからついいじめたくなる。
「井原さんて、そう言われてみるとお育ちが良さそうというか。物腰がやわらかくて品のある感じがしますね」
これがおべっかなどではなく、彼女の率直な感想であるのはわかった。
確かに周は育ちがいいし、はんなりとした柔らかさがある。
しかしながら、やつが彼女に褒められるのはおもしろくない……。
「でも、あいつ神職っぽくないでしょ」
「そうですねぇ。営業とかコンサルとか、そういう感じのほうがしっくりくるような。あっ、そんなこと言ったら失礼ですよね。ああっ、でもそう言ったら今度は世の中の営業とかコンサルの人に失礼かっっ」
彼女は正直な人だ。
そして、なかなかの洞察力を持っている。
「周は神職の資格は持っているんですが、普段は式場や幼稚園の経営のほうに携わっているんです」
「なるほど、それで……」
「どうりで世間ずれしているわけだと?」
「もう、先生はどうしてそうやって意地悪な言い方ばっかりするんですかっ」
俺の言葉にいちいち反応して、拗ねたり怒ったりするあなたが可愛いから。
運転中なので隣の彼女の表情をつぶさに見ることはできないが、その口調で想像ができた。
ちょっと拗ねたような、だけどどこか困ったような、そんな愛くるしい彼女の表情が。
俺にはいつも尊大な態度なくせに、意外と奥ゆかしいところもあるんだな。
「井原さんからは、看板の字を書いたのはあちらの神社の神職の方だとうかがったんですけど」
「その“神職の方”があいつです」
「ええっ!?」
さっきからいちいち驚きっぱなしの山下さんがおもしろい。
「神職って商売柄といってはなんですが、祝詞だのなんだの筆で字を書けるのが必須らしくて。あいつも子どもの頃から書道をやっていて心得があるんです」
「そうだったんですね」
「ところで、さっきの“ええっ!?”は、ぜんぜん神職に見えないという“ええっ!?”ですか?」
「い、いえっ、決してそんなことは……」
慌ててしどろもどろになる彼女の可愛いこと。
だからついいじめたくなる。
「井原さんて、そう言われてみるとお育ちが良さそうというか。物腰がやわらかくて品のある感じがしますね」
これがおべっかなどではなく、彼女の率直な感想であるのはわかった。
確かに周は育ちがいいし、はんなりとした柔らかさがある。
しかしながら、やつが彼女に褒められるのはおもしろくない……。
「でも、あいつ神職っぽくないでしょ」
「そうですねぇ。営業とかコンサルとか、そういう感じのほうがしっくりくるような。あっ、そんなこと言ったら失礼ですよね。ああっ、でもそう言ったら今度は世の中の営業とかコンサルの人に失礼かっっ」
彼女は正直な人だ。
そして、なかなかの洞察力を持っている。
「周は神職の資格は持っているんですが、普段は式場や幼稚園の経営のほうに携わっているんです」
「なるほど、それで……」
「どうりで世間ずれしているわけだと?」
「もう、先生はどうしてそうやって意地悪な言い方ばっかりするんですかっ」
俺の言葉にいちいち反応して、拗ねたり怒ったりするあなたが可愛いから。
運転中なので隣の彼女の表情をつぶさに見ることはできないが、その口調で想像ができた。
ちょっと拗ねたような、だけどどこか困ったような、そんな愛くるしい彼女の表情が。