博士と秘書のやさしい恋の始め方

ちょっと拗ねてわざと恨めしそうな言い方をした。

なのに、先生ときたら悪びれもせずまったく平気のご様子だ。

「そうですか? 痛いことは何もしていないはずですし、スカートがめくれてしまったわけでもない」

「めくれたら困りますっ。大したパンツじゃないんでっっ」

私のバカっ。

いくら照れて舞い上がっているからって、なんで自分のパンツの話とかしてるわけ、もうっ。

しかも、先生も先生だし……。

「大したパンツの定義はわかりませんが――」

「忘れてください……」

お願いだからスルーしてくださいっっ。

「間違ったふりをしてわざと転んでもらってもよかったかもしれない」

先生もこういう冗談を言うんだなぁ、なんて……。

ほんのちょっと驚いてみたり。やっぱり男の人なんだよね、とか思ってみたり。

「意地悪です、先生は」

「おもしろい人だ、あなたは」

先生はそう言って小さく笑うと、その腕に力をこめていっそう強く私をぎゅっと抱きしめた。

すごくドキドキする。でも、すごく安心もする。

今日の先生はなんだかとっても楽しそう。

その様子は私を喜ばせるだけでなく勇気づけた。

「先生だって、十分おもしろい人ですよ。十分すぎるほど」

ささやかなお返し(仕返し?)をしつつ、その胸に頬をうずめて目を閉じる。

あ、先生の袴姿、写真に撮りたいなぁ。

でも、先生単体(?)では撮らせてくれないだろうし。

一緒に撮りたいってお願いしたら、どうにかOKしてくれるかな?

なーんてことを考えていたら、両肩に先生の手が置かれて体を少し離された。

「すみません」

「え?」

「いや、汗臭くはないかと」

ああ、なんだそれで……。

ちょっとほっとした。いきなり謝られた意味がわからなかったし。

それに……淋しかったから。

「今日は自分がやるより見るばかりだったので、それほど汗をかいてはいないと思うのですが。それでも少しは……」

ちょっと困り顔で何やら弁解する先生が、すごく可愛かった。だから――。

「ぜんぜん平気です」

今度は私のほうから思いきり先生に抱きついた。