博士と秘書のやさしい恋の始め方

私の言葉はどういうわけか田中先生の謝罪の言葉に遮られた。

「先生……?」

「責任は俺にあります」

「そ、そんなことないですっ。布川先生からお聞きになったんですよね?」

「いえ、古賀先生から聞きました」

古賀先生から?

「山下さんがとても責任を感じて落ち込んでいるようだと」

「そうだったんですね……。なんだか皆さんにご迷惑おかけしてすみません」

こんなふうに気をつかわせてしまって、本当に申し訳ない……。

「いや、迷惑をかけているのは俺です」

「え?」

「RAの監督責任は本来俺にあります。なのにいつも面倒見のよいあなたに任せっぱなしで。だから、今回のことは俺の責任です」

「そんなことないですっ。だって、私が自分の一存で勝手にしたことですから」

「山下さんは優しいから」

先生、ごめんなさい……。

「優しくなんてないです、私……」

「優しいですよ、山下さんは」

「優しい」と言われることは、今の私にとって何より辛く苦しかった。

「違うんですっ。私、ぜんぜん優しくなんてないんです」

「山下さん……?」

「私は、偽善者なんです」

本当に優しい人というのは、田中先生のような人です。

私は相手を思って冷たくする優しさなんて持ち合わせてはいないから。

それに――。

「偽善者のうえに、利己的な人間なんです」

そうして私は先生に正直に罪を告白した。

「私の怠慢なんです。私、彼らが理解できるように教えるよりも、自分がちゃちゃっとやってしまったほうが早くて楽だと思ったんです」

RAにとって宿泊費をともなう複雑な旅費精算はそうそう発生するものではないし。

どうしても覚えなければならない作業ではないと勝手に思って判断した。

私は自分に都合のよい理由をつけて、それに甘えて楽をしたのだ。