side 仁


「おはよー」

太陽を背負いティナが微笑みを浮かべてそう言った

「……はよ」

寝起き特有のかすれた声がでる。
するとほんのりと頬をピンクに染めたティナはうんうんと頷いた


たまに、ティナは不思議な行動を取る。
嫌な夢の後でも、ティナを見ただけでどす黒い感情が拭われた。

5大迷宮の1つ、エンパール迷宮に潜った時の夢など悪夢以外のなにものでもない。
なぜあの時の夢を見たのか
それはきっと昨日出会った冒険者達のせいだろう。


迷宮に潜るとき危険だからとティナを置いて、あるパーティーに誘われ、一緒に潜った。

そのパーティーのメンバー5人と84階層まで3日かけて降りて行った
パーティーのメンバーはなかなか面白い奴等だった。
リーダーは女性で、その女の親友のような女性と男が3人
男の一人はリーダーの親友と付き合っていて、他2人はリーダーが好きだったらしい。

その頃俺はすでにティナと付き合っていた。
しかしティナの存在を知らなかったリーダーは迷宮の中で俺にアプローチをかけてくるようになった。
それが気にくわなかったらしい男2人に、俺は騙されて底の見えない崖に落とされた。

かなり落ちた。
まだ底に着かないのかと何度も考えた。
そんなに高いところから落とされて、無事なはずがない
俺は死を覚悟した。


でも、ティナが俺を助けてくれた。
ティナに迷宮に潜る前に貰ったネックレス

それが割れて地面に叩きつけられる瞬間体が半透明の球に包まれた。
それはすぐに消えたがあれはティナの結界だったらしい

助かったと思ったのも束の間、俺は魔物に襲われた

その階にいた魔物のレベルは500を越えていて、最早化け物
死にかけながらもティナに会いたい一心で奴等を殺した

神に貰ったスキル略奪というスキルで魔物からスキルを略奪しながら倒していき、最下層についた

ボスは規格外のが3体いて、結果、右目を失明した。
ボスを倒したあと、俺は現れた部屋に入った

そこには普通の部屋があって、迷宮について書かれた本もあった
迷宮は昔の偉大な魔法使い達が作ったらしい
この世界の人達を強くさせるためとか。


沢山本があったので役に立ちそうなのを幾らかアイテムボックスに詰め、財宝も全てアイテムボックスに詰め込んだ。


そのまま、外に繋がっている転移魔法陣で俺は外に出た。


そこは見知らぬ森の中、なのに会いたかったティナがいた。
一瞬幻かと思ったが違った。


神の知識を持つらしい彼女は、最下層からの転移魔法陣がここに繋がっていると知っていたらしい。

それで"なんとなく"戻ってくると感じたティナが迎えに来てくれたという訳だ。
失明した右目を一瞬で元通りに直された時は正直驚いた。

そしてティナも相当な規格外だと心の中で笑った。


迷宮の中で俺は変わったと思う
騙されたのは騙された俺が悪い。
なら少しでも怪しい動きを見せたら殺ってしまおう。
あそこの魔物は容赦がなかった。
敵に隙は見せるな。殺られる前に殺れ。
これが俺が迷宮で学んだこと。


変わった俺をティナはどう思っているのだろう。

いや、ティナがどう思っていても関係ない
ティナは俺の女で、もう逃がしてはやれないから。
例え俺を嫌おうと殺してだって俺の側から離してはやれない。

ティナの意思を無視して縛りつける俺を、ティナはまだ好きだと言ってくれる。
凶悪な俺に捕まった不幸な彼女。

縛りつける代わりに俺が全てから彼女を守ろう。
彼女の願いをできるだけ叶えてやろう

それが俺にできる精一杯の償い。


「…行くか。」

「ん。」


俺を受け入れてくれる彼女を大事にしようと、心に誓った。


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