不器用彼氏・彼女

俺はふっと後ろを振り向く……。
「何だ……『藤堂』か……」
俺の背後に立っていたのは『棗』だった……。
「『何だ』はないでしょう!」
「あっ! 悪い!」
「まっ、いっか……。ところでさ、『草凪』君! どうしたの? そんな大きなため息な
んかついてさ?」
『棗』は心配そうに俺の顔を覗き込みながら答える…。
「別に……何でもいいだろう……」
俺は首を横に振りながら答える……。
「どうせ、『彼女』にでも振られたんじゃないんですか?」
と、背後から『葵』がやってきて答えた……。
「……」
俺は『核心』をつかれ、何も答えられなかった…。
「えっ? それ、本当なの?」
「昨日……俺が……『勘違いして告白』した事がばれた……」
俺はうつむきながら答える……。
「……」
『棗』は黙ったままである……。
「良かったんじゃないんですか?」
『葵』は俺の方を向き答える…。
「ちょ……何言ってんの? 『葵』君?」
「……」
「だってそうでしょ……。本当の事が向こうに分かっただけの事だし……」
「いや、そりゃそうだけども……」
『棗』は慌てて『葵』をなだめる……。
「だってそうでしょう……。どうせ『亮』は本当の事は言えなかったわけだし、それで困
っていたんだから……」
「……」
俺は反論できなかった……。
「それに『その子』の事はそんなに『好き』じゃなかったんでしょう? だったら、それ
でいいじゃないですか?」
「そ……そうだよね……。ものは考えようだよね……。これで『草凪』君は何の気兼ねも
なく『河合』さんに『告白』できるようになったんだしね……」
「……がう……」
「『草凪』君……?」
「違う! 俺は……俺は……『野々村』の事が『好き』なんだ……」
「えっ?」
『棗』は驚いた表情でこちらを向く!
「……別にいいんじゃない……」
『葵』がポツリとつぶやいた……。
「えっ?」
俺は驚いた表情を見せる……。
「自分の本当の気持ちに気付いたんならそれでいいんじゃない……」
「『葵』……」
そう言って俺は『葵』を見上げる……。
「それに、その事に気付いたんなら『亮』も成長したって事だしね!」
「あのな……」
俺は呆れた顔で『葵』を見る!
「早くその事を『彼女』に伝えてきたら?」
「えっ?」
「早く誤解を解いて来いって事だよ……。大事なものほど失ってから気付くんだし、気付
いたら手遅れって事も多々ある事だしね……。その点『亮』はまだ手遅れにはなってない
わけだし……。ちゃんと話をして誤解を解いてきなよ! その後ちゃんと『彼女』の事が
『好き』だって事を伝えるんだよ?」
「『葵』……」
『葵』は俺の方を向き、ニッコリと笑いながら答えた……。
「うん! そうだね……それがいいよ……」
「二人共……ありがとう……」
俺は『美鈴』に本心を話す決心をする! そして、下駄箱を開ける……。すると中から
一通の『手紙』が入っていた……。
「何だ? これ?」
「何、何? それってもしかして『ラブレター』?」
「な……何言ってんだよ……」
俺は慌てて答える……。そして手紙を読んだ……。
「放課後……。『体育館裏』で待つ……」
「……」
「何、それ?」
「さあ?」
「で、どうするの? 行ってみるの?」
「そりゃ、行ってみるしかねえだろう……」
「物好きだね……」
「しょうがないだろう……」
そう言って俺はその『謎の手紙』を鞄の中に入れる……。

そして俺は、休み時間のたびに『美鈴の教室』に向かった!
「なあ、『葵』! 『美鈴』は来てるか?」
「今日はまだ来てませんよ!」
「そっか……」
だが、『美鈴』が登校してくる気配はなかった……。
「今日は『美鈴』は来ないのかなあ?」
そうして『放課後』になった!

「今日も一日終わったか……。って言っても今日は『終業式』だけなんだけどな……」
そして俺は鞄の中に入ってる『謎の手紙』を見る……。
「一体誰からなんだろう?」
「ねえ、『草凪』君! 本当に行くの?」
背後から『棗』が俺の肩越しに顎を置いて答える!
「おわ~! って、急に出で来るなよ!」
俺は慌てて飛びのいた…。
「ハハハ……ごめん、ごめん……」
「ったく……」
「で? 本当に行ってみるの?」
「まあ、行って確かめてみるしかねえだろう?」
「やばい『手紙』だったりして?」
『棗』が俺を不安がらせる発言をする!
「まさか……」
「わかんないよ?」
『棗』は意地悪そうに俺の方を見て答える!
「ま……まあ、それならそれで逃げてくるだけだよ……」
「ふう~ん! まあ、危なくなったら僕達を呼びなよ! 駆けつけてあげるから……」
「そっか……ありがとな! 『藤堂』!」
「その変わり……『恋』の行方がどうなったかちゃんと教えてよ……」
「目当てはそっちかよ!」
そう言って俺は『体育館裏』に向かった!

「こんな所で呼び出しなんて、一体誰なんだろう?」
すると、向こうから誰かが、俺の方へ歩いて来た……。
「ん? あれは?」
なんと向こうから歩いてきたのは『美鈴』だった!
「の……『野々村』……」
「おはよう!」
「お……おはよう……じゃなくて、今はもうお昼過ぎだぞ! って言うか今日、学校に来
てなかったんじゃないのか?」
「あ~、色々質問多すぎ……」
『美鈴』は頭を抱えて答える!
「あっ! ごめん……」
「……いいよ……別に……。責めたわけじゃないし……」
「そっか…良かった……」
俺はホッとして答える……。
「で、今日、学校に来たのは『草凪』が話があるからって言うから、わざわざ来たんだけ
ど……」
「あっ! そうだったのか……」
(俺に会うためだけに来てくれたのか……。なんかうれしいな……)
「ん? そういえば、ここに来てくれっていう『手紙』を貰ってここに来たんだけど……
あれってもしかして『野々村』だったのか?」
「そうだけど……何で?」
「宛名が書いてなかったけど……」
「あれ? そうだったっけ? まあ、いいじゃない細かい事は……」
(『野々村』って結構大雑把だったんだな……)
「で? 話って何?」
「えっ?」
「昨日言ったでしょう? 『大事な話』があるんだって?」
「えっ? あ……あぁ……」
「何? もしかして忘れてたの?」
『美鈴』は呆れた顔で答える……。
「そ……そんな事ないさ……」
俺は慌てて答える……。
「で、何?」
「それは……」
俺は一息いれた!
「ごめん!」
そう言って俺は『美鈴』に頭を深々と下げた!
「な……何? いきなり?」
『美鈴』は少し戸惑っている!
「俺、『野々村』に告白した時、『勘違い』して『野々村』に『告白』したんだ!」
俺は必死に訴えた!
「それは……聞いた……」
『美鈴』はうつむいて答える……。
「じゃ、聞くけど何で『勘違い』したって言わなかったわけ?」
『美鈴』は俺を問い詰める!
「うっ……それは……」
俺は少し戸惑いながら答えた……。
「なかなか言い出せなかったんだ……」
「だから……何で言い出せなかったのか聞いてるの?」
「『野々村』……気を悪くすると思って……」
「そんなの当たり前でしょう……」
『美鈴』は強い口調で答える……。
「ごめん……」
俺は謝ることしかできなかった……。
「はあ~……」
『美鈴』は大きなため息をつく……。
「もういい……」
「えっ?」
俺は驚いた……。
「もういいって?」
俺はわけが分からず『美鈴』に聞き返す!
「だから……『草凪』は私の事『好き』でもないのに『告白』したんでしょう?」
「えっ? あっ……うん……」
「だから……今までの事はなかった事にしようって言ってんの……」
「『野々村』……」
俺はそれ以上、言葉をかけられなかった……。
「……」
「……」
俺達は少しの間……黙っていた……。
「はい……それじゃ、これで話は終わり……。『草凪』もそれでいいよね?」
「『野々村』……」
「あっ、そうだ! 一つ言い忘れてた……。ちゃんと『学校』には行くからさ、あたしの
事は心配しなくていいよ……。それじゃ、あたし帰るから……」
そう言って『美鈴』は『体育館裏』を後にしようとした……。
「ま……待ってくれ! 『野々村』!」
俺は慌てて『美鈴』を呼び止める!
「あ……あのさ……『野々村』……。もう一つ『大事な話』があるんだ……」
俺はうつむき加減に答える……。
「何? まだあたしに用があんの?」
『美鈴』は足を止め、俺の方を向き、答える……。
「たしかに、初めは『野々村』の事なんとも思ってなかった……」
「あ~、そう……」
『美鈴』は少し不機嫌そうに答える……。
「でも……『野々村』と付き合って、俺は『野々村』に振り回されぱっなしだったけど、
なんだかそれが楽しくて、結局本当の事が言えずじまいになってしまった……」
「……」
「『野々村』がいなくなって、俺……考えたんだ……。俺にとって『野々村』はどんな存
在なんだろうって……」
「……」
『美鈴』は黙って俺の話を聞いている……。
「それで、気付いたんだ……。俺の本当の気持ちに……」
俺は『美鈴』の目を見て答える……。
「俺は『野々村』の事が『好き』なんだって……」
「!?」
『美鈴』は驚いた表情で俺を見ている……。
「だから……これだけは言わせて欲しい……。俺は世界中で一番……『野々村 美鈴』の
事が……『好き』だ……」
俺は『勘違い』で『告白』した時、相手の顔を見ずに勢いに任せて『告白』してしまっ
たけれど、今度は同じ間違いをしないように俺は『美鈴』の目をしっかりと見て『美鈴』
に『告白』した……。
「今更言っても遅いかもしれないけれど、俺……どうしようもないほど……『野々村』の
事が好きだーー! だから、全てを無かった事には出来ない……。だから……だから……
俺と……俺と付き合って下さい!」
俺は悔いのないように精一杯、俺の気持ちを『美鈴』に伝えた……。
「……言いたい事はそれだけ?」