不器用彼氏・彼女

「もう……あたしには関わらないで……」
か細く消え揺る声で『美鈴』は答える……。
「『野々村』……」
俺は『ドア』の前に立ち尽くし、自分の無力さを思い知った……。
「……もう……あんたの顔は見たくない……。学校にも、もう行かない……」
「『野々村』……。せ……せめてさ、『学校』には出てこようぜ?」
「……」
『美鈴』からの返事は無かった……。
「じ……じゃ……俺はもう帰るからさ、『野々村』もせめて……『学校』ぐらいは顔をだ
せよな……」
「……」
『美鈴』からの返事は無かった……。
「……」
「……」
俺はこれ以上話しても無駄だと思い、俺はその場を立ち去った……。

その『帰り道』に俺は深く後悔していた……。
「はあぁ~~……」
そして大きな『ため息』をついた……。
「何で……こうなったんだろう?」
そして俺は今までの『美鈴』の事を思い出していた……。

「お……俺と付き合ってください!」
「いいよ……別に付き合って上げても……」
「う~ん、あたしこのパンあんまり好きじゃないんだよね……。ねえ、悪いんだけどさも
う一度行って『サンドイッチ』と『コーヒー牛乳』を買ってきてくれない?」
「そうだ! 『草凪』も一緒に食べよう……」
「別に……頼んでない……」
「頼んでないって言ってるでしょう! 年上ぶんなー!」
「それって『デート』するってこと?」
「今度の『日曜』って言ったっけ?」
「えっ? あ……あぁ……うん……」
「……いいよ……別に……」
「それで? 今日はどこに連れて行ってくれるの?」
「う~ん? でも『草凪』は見たいんでしょう?」
「それじゃ、それでいいよ!」
「それじゃ行こっか?」
「ふう~! 別に怒ってないよ……」
「それだけ今日の日を楽しみにしてたって事でしょう?」
「映画を見てるより『草凪』の寝顔を見てる方が面白かったし……」
「なっ……何でもない……。それより次の場所行こう?」
「大丈夫?」
「でしょ? もう本当に信じらんない!」
「それで? 私とその『大事な用事』どっちが大切なの?」
「何だ! そんな事か……」
「ほら、早く『学校』に行かないと遅刻しちゃうよ?」
「そんな事まだ気にしてたの? 『草凪』……。昨日言ったでしょう? 『大事な用事』
があるって……。『あたしと同じくらい大事な用事』って……。それってあたしの事、大
事に思ってくれてるって事でしょう? だから……もう気にしてないよ……」
「ほら、早く『学校』に行かないと遅刻しちゃうよ?」
「ほら、ほら、早く、早く……」
「あっ! 深夜に『コンビニ弁当』を買うんだ?」
「そっちこそこんな時間に何やってんの?」
「それじゃ、『草凪』が一緒にいてくれる?」
「うるさいな~! ほっといてよ!」
「今、聞いてるのは『洋楽』! 主に一九八〇年代頃の『洋楽』を聴いてるの……」
「あたしあんまり、歌、得意じゃないからな~!」
「そ……そう? それじゃ、歌うね……」
「そう……それじゃ、お言葉に甘えて……」
「う~ん! 結構歌ったし、今日はこの辺で勘弁してやるか……」
「『草凪』には関係ないでしょ?」
「帰りたければ帰っていいよ?」
「……もう少しその辺をブラブラしてから帰る……」
「……あたしの『父親』……再婚したいって言ったんだ……」
「……あたし……あの人の事……『お母さん』なんて呼べない……」
「大体『お父さん』も『お父さん』だよ! 『お母さん』が死んでそんなに経ってないん
だよ! なのにもう……『新しいお母さん』と再婚するなんて……『お父さん』……『お
母さん』の事、忘れちゃったの? あたし……悲しいよ……」
「……あたしは……あたしは……『新しいお母さん』なんていらないー!」
「うるさいー! どうせあたしの気持ちなんか誰もわかんないんだー!」
「……別にいいよ……。今までだって一人だったんだし、これからも一人でも……」
「……『草凪』は大人だね……」
「『草凪』……あたし……話して見る……。あたしの本当の気持ちを……」
「昨日話したんだ……」
「それでね……『新しいお母さん』がね……無理に『お母さん』って呼ばなくてもいいよ
って……」
「それでね……ゆっくりと『家族』になろうって……」
「あ……あのさ……『草凪』……ありがとう!」

「本当にこれでいいのか……?」
俺はこれまでの『美鈴』との出来事を思い出し、俺は『一つのある決心』をする!
「いや……これでいい訳が無い…。もう一度『美鈴』と話しをしよう……」
俺は……『後悔』をしないために、もう一度『美鈴』と話し合いをするために、『美鈴の
自宅』を目指した……。

「すみません! 又、お邪魔します!」
俺は一息ついて、答える……。
「あら、『草凪』君! どうしたの? もしかして『忘れ物』でもしたの?」
「はい……。とても『大事な忘れ物』をしたので、取りに来ました……」
「あら、そうなの? それじゃ、早くその『大事な忘れ物』を、取ってらっしゃい……」
「はい……そうさせてもらいます……」
そう言って俺は、『美鈴の部屋』を目指した……。

俺は大きく深呼吸をし、そして『美鈴の部屋』野ドアをノックする……。
「ふう~~……。よし…。『美鈴』いるか? 俺だ! 『草凪』だ! 話があるから聞い
てくれれるか?」
しかし『美鈴』からの返事は無かった!
「俺はどうしても『美鈴』に言わなければならない話があるんだ……」
けれど、俺はかまわずに話す……。
「ごめん……」
俺はそう言って、『部屋の前』で深々とお辞儀をした……。
「本当の事を話すよ……」
俺は一息ついてから、話し始めた……。
「たしかに初めは、『勘違い』をして、『美鈴』に『告白』をした……」
その時、誰かが階段を上がって来て、そして壁にもたれ掛かり俺の話を聞いている……。
けれど、俺はその事にまったく気付かずに話を続けた……。
「いつかはその事を言わなければならないと思ってた……。けど……いつまでたってもそ
の事を言うことができなかった……」
俺はうつむきながら、話を続けた……。
「それは多分、俺が……『卑怯者』だったからだと思う……」
「……」
「俺さ……一度も付き合った事がなくて……多分舞い上がってたんだと思う……」
「……」
「俺さ……初めて『美鈴』と付き合って、その次の日、『勘違い』をして、『好きでもな
い子』に『告白』して、しかも『OK』までもらっちゃって……正直どうしていいか分か
らなかった……」
「……」
「それで、どうしていいかわからず、『親友』に相談したんだ……」
「……」
「ハハハ……情けないだろう……。俺は自分の事一つ決められないんだ……」
「……」
「けどさ……こんな俺でも一つだけ気付いた事があるんだ……」
「……」
「『美鈴』がいなくなって、初めて自分の気持ちに気付いたんだ……」
「……」
そして俺は真剣な眼差しで話し始める……。
「俺は……」
俺は自分の服の胸の辺りを掴み、そして話し始める……。
「俺は……俺は……『野々村 美鈴』が好きだー!」
「!?」
「今頃言っても遅いかもしれないけれど、俺……失って初めて気付いたんだ……」
俺は一息ついて、答える……。
「俺は……この世界で一番『野々村 美鈴』の事が好きだ……」
「!?」
「多分、今頃言っても遅いかもしれないけれど……自分の気持ちに嘘をつくことはできな
い……」
「……」
「だから……一目でいいから姿を見せてくれないか?」
「……」
だが、『美鈴』からの返事はなかった……。
「俺……俺さ……馬鹿だから……失って初めて『野々村』の事が好きだって事に、気付い
たんだ……。だから……だからさ……一目でいいから俺に姿を見せてくれないか?」
そう言って俺は涙を流しながら、その場に崩れ落ちた……。
「……」
そして『ドアノブ』をガチャガチャして引いたかが、ドアはびくともしなかった……。
「ハハハ……。そりゃ、そううだよな……。もう、俺なんかには会いたくないよな……。
でも……でもさ……『野々村』が俺に会うのが嫌だっていうのなら……もう……俺……俺
には会わなくてもいい……。けど……せめて『学校』には出てきてくれないか?」
「……」
けれど、『美鈴』からの返事はなかった……。
「……」
俺はその場に十分ほど立ちすくんでいた……。
「……」
けれど、なんの進展もないので、その場を立ち去ろうとした……。
(言いたい事は言ったんだ……。もう…悔いはないよな?)
と、その時、壁際で俺の話を聞いていた『人物』が俺に近づいて来た……。
「こんな所で何やってんの?」
俺は『美鈴』の姿を見て、驚く……。
「……」
俺は気が動転して、言葉を失った……。
「の……『野々村』……。ど……どうしてここに?」
「はっ? 何言ってんの?ここはあたしの『家』なんだけど……」
「あっ……いや……そういう意味じゃなくて……」
俺は自分で何を言ってるのか分からなかった……。
「で? 何?」
そう言って『美鈴』は頭をかきながら俺に尋ねる……。
「あっ……いや……その……」
俺は『美鈴』に会ったら、言いたい事が山ほどあったのに、いざ、『美鈴』を目の当たり
にすると、何を言っていいのか分からなくなった……。
「言いたい事がないのなら……私……『部屋』に入りたいんだけど……」
「あっ! ちょっと持って……」
俺は慌てて『美鈴』を引き止める……。
「何?」
「えっと~……。その……さっきの話、聞いてた?」
「さっきの話って?」
そう言って『美鈴』は俺に聞き返す……。
「えっ? だから……その……ここで喋ってた事……」
俺はしどろもどろになりながら答える……。
「悪いけど……私……『音楽』を聴いていて、何にも聴いてなかったんだけど……」
『美鈴』の耳には『イヤホン』がついていた……。
「あっ! そうなんだ……」
そう言って俺は少し肩を落として言った……。
「悪いんだけどさ、あたし疲れてんの……。そこどいてくれる?」
「あ……あぁ……」
俺はそう言ってその場を退いた……。
「じゃなくて……俺、どうしても『野々村』に言わなければならない事があるんだ!」
俺は慌てて答える!
「悪いんだけどさ、今日は疲れてんの……」
「そ……そっか……」
「あっ、そうだ! 一つ言っていい?」
『美鈴』はこちらを向いて言った!
「えっ? な……何?」
「ドアを開ける時は、『引く』んじゃなくて、『押す』の……。分かった?」
「へ?」
「じゃ……」
そう言って『美鈴』が『部屋』に入ろうとした時、俺の方を向き、答える!
「話したい事があるなら、明日、学校で聞くから……」
「えっ?」
俺は驚く!
「じゃ……」
バタン! そう言って『美鈴』は自分の『部屋』に入る!
「ハ……ハハ……良かった……。本当に良かった……」
俺はほっとして、その場に座り込んだ……。

そして長い、長い一日が終わり、そして次の日、俺は『学校』に登校する…。『美鈴』が
『登校』してくると信じて……。今日は『十二月二十五日(金)』終業式の日……。
「はぁ~~!」
俺は大きなため息を吐き、下駄箱を開ける! と、その時、後ろから誰かが俺に駆け寄
って来た!
「どうしたの? そんなに大きなため息をついちゃって?」