思い出の守り人


「ずいぶん打ち解けたみたいだな……」

 遅れて紅夜が仮想世界へと到着すると、優希を挟んで双子が言い争いをしていた。
 珍しく奏太が春陽のように感情的になっており、わいわいと会話を繰り広げている。

「弓矢より翼のほうが綺麗だし可愛いもん!」

「確かに飛べるのは便利だけど弓矢のほうが戦いに向いてる」

「優希ちゃんは女の子だから守りでいいの!」

「単身の時に複数に狙われたらどうするの? 攻撃は最大の防御って言うし」

「優希ちゃんは翼!」

「いいや弓矢!」

「あ、あの……」

 挟まれた優希は困りきった表情で紅夜を見つめる。
 三人の様子に紅夜は息を吐き出し、早足で距離を縮めた後に両手に拳を作り。

「いい加減にしろ!」

「――……っ!」

 双子の頭に下ろした。
 げんこつを落とされた二人は声にならないうめきをあげながら頭を抱えこむ。
 二人の様子に優希がまるで自分のことのように痛そうな表情を浮かべた。

「まったく。活動前に何をやってるんだ」

 篠崎さんを困らせるな、と責めるような声に二人は頭を下げて優希と紅夜に謝る。
 紅夜は優希へと視線を送り説明を促した。

「先輩方が私にどんな武器が合うか話していたらこうなってしまって……」

「キューブの武器の種類は個人差がある。近しい者が同じ武器を持つのは珍しいから諦めたほうが賢明だ」

 同時に肩を落とす様子に優希と紅夜は笑いを噛み殺したのだった。





 紅夜を先頭に静かになった双子の後をついて行くと病院の前にたどり着く。
 見覚えのある建物に優希は目を瞬かせた。

(ここって……)

「今夜はここの患者を探っていこうと思う」

「対象者が決まっていないんですか?」

 奏太が聞くと、ああ、今夜は調べるだけだ、と返して紅夜は院内へと足を入れる。
 入って直ぐは外来患者や見舞い人の受けつけロビーのため、今はひっそりと所々に明かりがあるだけ。

「病院なんて久しぶりだなぁ……」

「今夜は危険はなさそうですね」

 物珍しげに見回す双子とは違い、紅夜は険しい顔をした。