紅夜と薫はスーツ、奏太と春陽は制服を身に纏っている。
 優希が目を見開き、言葉を失って口を開けたままにしているのを見た紅夜が、驚かせて悪かった、この移動もキューブの力だ。と簡潔に説明した。

「すまないが、詳しい説明は仮想世界でさせてもらいたいがかまわないか?」

「はい、大丈夫です」

 頷くと春陽の柔らかな手が優希の手を握る。
 暑いはずなのに、他人の温もりを感じた優希は肩の力が少し抜けたのを感じた。

「優希ちゃんは見習いさんだから、春陽が一緒に連れて行ってあげるね!」

「キューブの力が目覚めないと仮想世界への移動はできません。途中で春陽の手を離すとここに戻るので気をつけて下さいね?」

「わかりました……!」

 笑顔で告げられた言葉に優希は春陽の手を強く握る。
 その様子に奏太は目を細めたままで肩を揺らした。

「最初からそんなに力が入っていたら疲れてしまいますよ?」

「――こら! あんまりからかってやるなって。な?」

 彼の言葉に優希は体に力が入ったまま。
 近づいて来た薫が彼女の頭をやや荒く撫で、奏太へと視線を向けた。
 薫の真っ直ぐな視線に奏太は笑みを消し、眉を下げる。

「すみません。あまりにも緊張していたようなので、つい」

 顔を下に向けて視線をそらした奏太は次いで紅夜に視線を向けた。
 視線を受けた紅夜は頷いて髪を揺らす。

「そろそろ移動しよう」

 彼の言葉に優希を除いた三人が頷き、メモリーズキューブを取り出した。
 それぞれチェーンに通しており、見た目はアクセサリーのようにも見える。
 それを腕に通し視線を交わし合う。
 優希のキューブはチェーンなど通っていないので、小さな巾着袋に入れてジャージのポケットに入れている。
 ポケットに触れてキューブを確認した優希は、隣で差し出されていた春陽の手をしっかりと握った。

「これより仮想世界へ移動する」

「――了解」

 三つの声が重なった瞬間、キューブが一斉に光を放つ。
 光は五人を包みこんでいき、光が消えたその場には夜の静けさだけが息づいていた。