開かれた教会の扉。そこにいたのは・・・

和服を来た、俺より少し小さい少女だった。
そして、その少女から敵意を向けられている事に気づくのに、時間はかからなかった。

「誰っ!」

その声と共に放たれる炎の球。このスペルは・・・

「狐火<壱式>!?」

威力は低いが間違いない。これは狐火<壱式>だ。
そんなことを考えてるうちに、回避するタイミングを逃した俺は、咄嗟に左手でガードした。

するとなんと、少女の放った炎は俺の左手の紋章に吸い込まれていった。

「そんなっ!?」
「うわ、ビビった!なんだこれ・・・?」

双方共に状況が理解できていない中、

「動くな」

ハンスが少女の後ろに回り込み、首にナイフを突きつけた。

「ひっ・・・!?」

突然の事に少女は、驚きと恐怖で動けないようだった。

「おいハンス!可哀想だろ!」
「攻撃してきたら誰だって敵だろ?」
「でも、まだ事情も分からねぇんだ。聞いてみてもいいんじゃねぇか?」
「・・・まぁ、それもそうか・・・。じゃあ、お前がやれ。俺はこういうの苦手だ。」

そう言うとハンスは少女の背中を押した。その衝撃で、少女は前のめりに倒れてしまった。

「痛っ・・・」
「大丈夫?悪いね、あいつはそういう奴だから。」

そう言いながら手を差し出すと、素直に手を握り立ち上がった。

「・・・ありがと」
「いや、別にいいよ。こっちこそごめんな?突然驚かせて。」
「・・・私もごめんなさい。突然攻撃して・・・」

そのあと、彼女は事情を説明してくれた。
彼女の名前は〔穂香〕と言うらしい。彼女いわく、「見つかりたくない人がいる」とのことで、本名と読み方は一緒でも字は違うらしい。そして教会に来た理由は新人戦に向けてのお祈り、との事だった。

「新人戦、出るんだ。」
「当たり前じゃない、折角イレイサーになれたんだもの。絶対優勝してやるわよ。」
「じゃあ俺のライバルになるな。」
「え!?貴方も出るの!?」
「俺のことはラーでいいよ。君の言った通り、折角イレイサーになれた訳だ。お互い頑張ろうや。」
「う、うん!」
「二人とも、盛り上がってるとこ悪いが」

突然ハンスが言い出した。

「穂香、だったか?今のお前じゃラーには勝てねぇ。」
「・・・なんでよ」
「お前も見ただろ?お前のスペルはこいつの刻印に吸収されちまう。」
「そう!それよ!なんで吸い込まれたの!?」
「あー・・・それは」

言ってしまっていいのか、という疑問はあるが聞かれてしまっては逃げれない。

「俺、神持ちらしいんだ。この刻印は太陽神ラーの刻印。だから炎を飲み込んだんだと思う。」
「神・・・持ち・・・!?」

予想通りの絶句。

「ああ、こいつは太陽神を持ってる。だからお前じゃ勝てねぇんだよ。」
「ぜ、絶対勝ってやる・・・!」
「それはお前の自由さ。帰るぞラー。」
「あ、ああ・・・穂香、お前これからどうすんだ?」
「帰る」
「そっ・・・・・・・か!?」

今気付いた。彼女のお尻のところから尻尾が生えてる。しかも・・・

「穂香、もしかしてお前・・・」
「ん?」
「妖狐か?」
「へ!?なんで分かったの!?」
「いや、尻尾・・・」
「え?わあああっ」

どっかで聞いたことのある反応。

「ど、どうしよぉ・・・」
「いや、そんなに気にしなくても・・・」
「だって・・・見せるだけで嫌われるし・・・」
「別に気にしなくても、俺の友人に妖狐がいる。俺たちは平気さ。」

さすがハンスだ。何気なく優しい。(軽く腹立つ。)

「ほ、本当に?」
「嘘ついてどうする。」
「だよね・・・うん、ありがとう。」
「もう時間も遅い。帰るぞ」
「りょーかい。またね穂香。」
「またねー!」

教会で別れた二組。一週間後、どんな戦いになるのか、今から楽しみだった。