「実は好きな人、いるんです」


私がこう切り出すと、直さんは興奮気味に私の腕を掴んだ。


「え、そうなの?好きな人、いるんだぁ~」


嬉しそうにそう言ってくれた。


「実はね・・・・・・学校の先生なんです」


その時は気付かなかった。

今から思えば、直さんは一瞬驚いた顔をしたような気もする。

そんなささいな変化に気付くはずもない。

全く予想もしていないんだから。



「へぇ・・・・・・先生、なんだ」

「はい!!めちゃめちゃかっこいいんです」


残酷だよね。

どちらにも。


私は、直さんの気持ちも知らずに、会うたびに新垣先生の話をした。


それを聞いていた直さんの切ないキモチを考えると・・・・・・残酷だなって。


と、同時に何も知らずに、直さんに先生の話をし続けていた私自身も・・・・・・かわいそうだなと。