このご時世に挨拶だなんて、逆に珍しいくらいだ。
あたしが引っ越す時に大家さんに、配り物は何が言いか聞いたけど、
「今は挨拶される方が少ないですよ。あんまり会いたくなくないて人もいるし、家の前に何かが置いてあることを不気味に思う方もいますから。」
と、あたしの挨拶したい心を丁寧にえぐったのだ。
それ以来、新参者が越してきたときに何かもらうことはなかったし、顔をあわせれば挨拶程度だ。
なんでも、賃貸アパートなんざそんなものらしい。
下手にご近所付き合いしなくていいなら、そっちの方が気が楽だ。
「みきちゃ〜ん」
ユウキが甘えたようにあたしのヒザに寝転んできた。
「俺、こうしてるだけで幸せ……」
柔らかな髪の毛をあたしは撫でた。
年下っちゃ、年下らしい発言と行動はあたしの気分を悪くさせない。
むしろ、居心地がいい。

