「ねっ?これなら迷子にならないやろ?」
「う、うん」
満面の笑みでそんなことを言われたら、何にも言い返されへんし。
そして、俺もまた美沙の手を握り返した。
小さな手やな・・・柔らかいし・・・。
小さい時によく繋いだ手とは異なる感触に、女を感じてしまうのであった。
でもさ、普通男から繋ぐものじゃないんか?
どこかおかしな関係に疑問を持ちながらも、口に出せないでいた。
「准、どこも並んでるね」
「そうやな・・・美沙はどこに行きたい?」
「あれ、並んでみる?」
美沙が指差したのは、今人気のアトラクションで、なかなかの行列ができていた。
「うん。行こうか」
俺らは、変わらず手を繋ぎ、行列に並んだ。前に並んでる、カップルがイチャイチャしていたので思わず見てしまった。
女は男の目を見つめて、甘い声で話し、男もそれに応える。
しかもお互いの腕を回し、向かい合っている。
甘すぎる。公共の面前でよくやるよ。
その時、美沙と繋いでいる方の腕がグイッと引っ張られた。
「何するんや!」
「見すぎ」
小さな声で美沙は、俺の行為を注意した。
まじで?
俺、そんなに見てた?
「気をつけます」
美沙の呆れた顔を見て、頭をペコリと下げた。
「准もあんな風にしたいん?」
顔だけを俺に向けて、首を傾げて聞いて来た美沙に、一瞬にして体中が熱くなるのがわかった。
「・・・ちがうし」
「ふふっ、顔真っ赤やし」
「うるさい!」
俺がムキになるのを見て、さらに美沙は笑い続けていた。
正直言ったら、したいよ・・・。
しかも、美沙とな。
でも、無理やし。
俺がそう思っていたら、美沙は思ってもいなかったことを言い出した。

