「彼女いるんやぁ。准のくせに生意気!」


聞き覚えのある嫌な声に肩がすくみ振り返ると、予想通りの人物が立ちはだかっていた。


「美沙・・・」


目の前の美沙は、相変わらず整った目鼻立ちをしていて、敵ながらも『きれい』と口に出して言ってしまいそうなくらい美しい。


変わっていたのは、髪型。


昔は常にショートカットだった美沙の髪は、肩くらいまで伸び、さらさらと風になびいいていて、思わず触ったらどんなんだろうなんて思ってしまった。



そして、偉そうに立ちはだかっている美沙の目線は少し上を向いている。


つまり俺の方が背が高くなっている。


「准のくせに私より背が伸びてるなんて生意気!」


『准のくせな生意気』は今まで何度も言われ続けていたが、久し振りに聞くと何だが心地よく感じている自分がいて、ゾッとした。


「知るかよ。勝手に伸びるんやから」


あれ?俺、今なんて言った?


上から見下ろしてるから、気まで大きくなっているようで、昔では決して言えないようなことを口走っていた。


美沙は俺を見上げてくやしそうな顔をしている。


くくく・・・笑いが止まらん。


何この優越感!!


成長期よ、ありがとう!


「准ってさ、あんなぶりっこが好みやったんやぁ」


確かにな、あの子はぶりっこが過ぎる。

俺のことが好きと言うのに、他の男にも色目を使う。

それも彼女と付き合えない理由。


「悔しかったら、スカートのひとつでも履いてみたら?」


負けじと美沙に攻撃する。

美沙とは生まれた時から一緒やけど、美沙がスカートを履いていた記憶はない。


まぁ、中学、高校の制服はスカートやろうけど、俺は見たことないし。


「うるさい!」


「それに、その言葉じゃ、男は嫌がるで」


あくまで、上から目線で話す。


くぅぅぅぅっ!たまらんなぁ!


「もういい!准のアホ!」


美沙は俺の横を通り過ぎ、走っていってしまった。


勝った!


苦節15年。



初勝利!