小学生の頃は、美沙からチョコを必ずもらっていた。


と言っても、美沙の父親と父さんにも同じものを渡していた。


つまり、家族に渡すのと同じ感覚のチョコだった。


そんな義理チョコも会わなくなってからは、もらっていなかった。


「ただいま」


「おかえり〜」


いつものように母親たちが暢気にテレビを観ながら話していた。


よく毎日話すことがあるもんやな・・・。


リビングを通り過ぎようとした時に、美沙の母親に呼び止められた。


「准くん、これ美沙が渡しておいてって」


「えっ?」


美沙が?俺に?



「時間がなかったから、市販のものになったみたいなんやけど・・・」


「あ、ありがとう」


どうせ、アキラに買うからついでに買っただけやろ?


美沙の母親から包みを受け取ると、自分の部屋に直行した。


「はぁ〜」



これが本命チョコならどんなに嬉しいことか・・・。



本命ではないだろうチョコを目の前に、ため息ばかりが出ていた。



なんであいつはこんなことするんや。




この3年音沙汰もなかったのに、急に現れて・・・



俺の心を掻き乱して・・・


そして・・・


俺の心の中を占領してる。




また美沙に会えない日々が続く方が、アキラとの話を聞かないで済むからいいのか。



会いたい気持ちが大きくなりすぎて、すでに苦しくなっている状態を開放してほしいという思いの間でさ迷っていた。