これを美沙に渡したら、あいつどんな顔するかな。

右手に持っている、白い小さな紙袋を満足気に見ると、駅の階段を降りホームへ向かった。



俺、何を期待してるんや?


自分の感情の変化に背を向けるように、苦笑いをした。


そして前を向き、向かいのホームに目をやった。


えっ・・・?


美沙?



目線の先には、美沙と昨夜美沙の家の前で会った『アキラくん』が仲よさ気に電車を待っていた。



顔が一瞬にして強張り、時間が止まってしまったように感じた。


どこからどう見ても恋人同士やん・・・。


しかも、あのワンピース。美沙は、いつしか見た白いワンピースを着ていた。



あいつとのデートの為に買ったんかぁ・・・。


やっぱり付き合ってるんやん。


目の前の状況に目を覆いたかった。


なんで、あいつが彼氏と一緒にいるだけでショックを受けてるねん!



ありえへんし・・・。



俺は・・・俺とあいつは・・・ただの『幼なじみ』。



そして・・・『女王様と奴隷』の関係。



いや、そんな関係さえも、きっととっくに解消されてるんや。




膨らみつつある想いを心の奥の奥に隠そうとしていた。