高校に入り、俺は友達の誠に紹介された別の高校の綾香ちゃんと遊ぶようになっていた。


綾香ちゃんは、女の子らしくていい子なんやけど、好きという感情を持つことはなかった。


そう思っていたから、付き合おうとは思っていなかった。


しかし、彼女は俺のことが気に入ったらしく、二人きりのときのアピールがハンパない。


今も遊びに行って、地元の駅で別れようとしたら・・・。


「今日は、家に誰もいないの」


・・・誘ってる?


『据え膳食わぬは男の恥』とはいうものの、気のない相手とそういうことになるのはちょっと・・・後始末がややこしそうで嫌だ。


「ごめん。今日は用事があって・・・」


「そう・・・」


なおも綾香の上目遣い攻撃は続く。


『馴れてる』


そう感じた。



彼女は、自分がかわいいと自覚している。

そして、男が弱い表情なんかも知っていて、その表情を引き出しから引っ張り出してくる。


俺はそんな罠に引っ掛かったりしないよ。


「じゃあ、またね」


「うん」


俺は、何もなかったかのように立ち去る。


彼女と別れて、家に帰る道を歩いていると、後ろから声を掛けられた。