「美沙」


そう低いトーンで言うと、美沙をお姫様抱っこして、立ち上がった。


「キャー!」


美沙は突然の出来事に体が強張っていた。


そんな美沙を抱き抱えて、美沙の部屋に向かった。

美沙の部屋に入ると、美沙をベッドに寝かして、そのうえに跨がった。


「美沙、好きやで」


俺は、真剣な目つきで美沙を見つめた。

すると、、美沙は『蛇に睨まれた蛙』の如く、動くことができなくなっていた。


「じ、准・・・ちょっと・・・ま、待ってよ・・・今日はしないんじゃ・・・」


美沙は、しどろもどろになりながら、声を出していた。


かかった!


「・・・何をするんや?」


聞かれている意味を把握した美沙は、自分が騙されたことに気付いた。


「えっ?あーっ!」


「俺の罠にひっかかった!」


「最悪やぁ!」


そう言う美沙の顔も笑顔だった。


しかし、笑いも途切れ、冷静さを取り戻した俺らは、今置かれている状況を思い出した。


あっ・・・俺、美沙に跨がったままやし・・・。


二人はそのまま見つめ合い、しばらく沈黙の時間だけが過ぎていた。


美沙・・・君が欲しい・・・けど・・・まだ我慢しないとな・・・。


だから・・・これだけは許して・・・。


「美沙・・・ギュッってしていい?」



「うん」


美沙はゆっくりと頷いた。


「美沙、めっちゃ好き」


そう言うと、美沙に覆いかぶさるように抱き着いた。



「私も」


美沙もまた、俺背中に腕を回し抱きしめてくれた。



うわぁ・・・めっちゃ柔らかいし・・・


いい匂いやし・・・


やばい・・・


我慢できへんよ・・・。


さっき、手は出さないって決めたのに・・・。




「あかん」



急に起き上がると、ベッドの下の床に座り込んだ。



「えっ?」


「これ以上くっついてたら、我慢できへんようになる」


俯きながら言う俺に向けられた美沙の顔は、優しいものだった。


「・・・准、ありがとう」


二人の間に甘い空気が流れていたが、俺はあることを思い出した。


「あっ、美沙・・・母さんたちには何て言う?」


「あっ・・・」



そうだ、母さんたちが帰ってきたら、根掘り葉掘り聞かれるのは目に見えてる。



その時なんて言おうか・・・。