「停電した日に、美沙が吊橋の話をしたやん?」


『私が・・・今感じているドキドキは・・・暗闇だけのものなんかな?』


「あの後、告白したのにさ、お前寝てるしさ・・・。しかも、俺はなかなか寝れないしさ・・・」


少し責めるような口調で言ったが、やはり美沙の方が一枚上手だった。


「その割には、私の上で寝てたやん」


ストレートに言う美沙に、あたふたして言葉が出てこなかった。


「・・・それは」


「それは?」


美沙はなおも俺を追い詰める。

その表情は、困っている俺を見て喜んでいるようにしか見えなかった。


「美沙が欲しいから?」


俺・・・何言ってるんやろう。


「なんで疑問形やねん!」


美沙の鋭いツッコミを受けて、笑い飛ばそうかと思っていたが、口では違うことを言っていて自分自身驚いていた。


「ほんま」


「えっ?」


突然、真剣な顔に変わった俺に、美沙は目を丸くするばかりだった。


「俺は、美沙が欲しいよ。全部欲しいよ。笑った顔も怒った顔も・・・でも悲しい顔と寂しい顔にはさせない」


俺は、これ以上ない真剣な眼差しを美沙に向けた。

次の言葉を探していると、美沙が急に抱きついてきた。


「准!」


み、美沙?

「い、いきなり抱き着くなよ!襲うぞ!」


突然の美沙の行為に、焦る気持ちを冗談で掻き消そうとしたが、そうはいかなかった。


「いいって言ったら?」


このパターン・・・罠や!


同じ手ばかり通用すると思うなよ!


そう思いながらも、上目遣いで誘ってくる美沙にドキドキしていた。


「今日は我慢する。いくらなんでも付き合ってすぐは・・・しない」


凛とした態度で言ったつもりだったが、やっぱり美沙には簡単には勝てない。


「何を?」


「えっ?」


「准、何をするつもりやったんかな?」


意地悪な顔をして俺の顔を覗き込んでくる美沙を見つめていると、名案が浮かんだ。