学校に着いてからも准はブツブツと文句を言っていた。


「准、おはよ〜!どうした?機嫌悪そうやな?」


俺の様子を見て、健吾(ケンゴ)が前の席に座りながら声を掛けてきた。


「そうか?」


なんともないような返事をしたものの、機嫌悪いですとも!


朝からとんだ災難に遭ってしまったからな・・・。


「なんかいいことないかな〜」


健吾は、中学からの友達で『なんかいいことないかな〜』といつも口癖のように言ってる。


そういえば文化祭に誘われてるんやった。


「なぁ、健吾。来週末ヒマ?」


健吾も、俺と同じで彼女がいない。


「ヒマやけど?」


「じゃあ、大慶高校の文化祭行かへん?」


「お前、綾香ちゃんは?」


健吾も、綾香ちゃんが俺に気があるのを知っていた。


「あの子は関係ないし」


首を横に振りながら、俺は否定した。


「かわいい子やのに、付き合えへんの?」


「なんかなぁ・・・違うんよな・・・」


どういうふうに表現したらいいのかわからないが、なんか違う。かわいいのは確かだが、付き合いたいとは思わない。



「准、理想高すぎなんちがうか?」



綾香ちゃんだって、いい子だと思うよ。

かわいくてでスタイルよくて、性格もいい。


ぶりっこやけど・・・話も弾む。


でもそれ以上に何かが違う気がする。


何や?


わからん! 


俺は、解けない問題にあまり真剣には取り組むつもりはなかった。


「そんなんじゃないし。で、行くんか?」


「行く行く!准、友達でもいてるんか?」


「あぁ、美沙・・・いや、幼なじみが大慶え・・・」


やばっ、美沙って言ってしまった。


「今、『美沙』って言ったよな?」


「言ったかな?空耳じゃね?」


健吾の顔が輝き出したのがわかった。


「いや、確かに言った!お前の女の子の幼なじみがいてたんや!」


「女の子・・・」


「違うんか?」


確かに性別は女やけど、『女の子』って柄じゃない。


同じ女が付いていても『奴』と言った方がいいかもしれない。


「まぁ、一応、女」


「何それ、一応って・・・まさかゴリラみたいな女とか?」


ゴリラみたいな女?なんやその例えは!


そんな女がいたら、会ってみたい。


「いや、顔はいいけど、性格に難あり」


「性格?」


「めちゃくちゃ気が強い」


「美人で気が強い?!いいやん!攻められたい!」


はぁ?『攻められたい』って・・・こいつこんな趣味あったのか?


「お前な・・・」


「准、絶対その子紹介しろよ!早く会いたいなぁ、女王様!」


じ、女王様?!確かに女王様やけどな・・・。


「お前にそんな趣味があったとはな・・・」


俺の呟きが耳に入らないくらい、健吾は目を輝かして妄想していた。