「はぁ・・・もうちょっと一緒に居たかったなぁ」


自分の部屋のベッドに横になると、いつの間にか眠っていた。


「准!寝てるの?起きなさいよ」


「あぁ、母さん、帰ったの?」


「今帰って来たの。准、夕飯は?」


「食べてないよ」


「じゃあ、美沙ちゃんが作ってくれてるみたいやから、行くわよ」


「あ、うん」


俺は、再び美沙の家に向かった。


そこは、二人きりで過ごした時とは異なる雰囲気を醸し出していた。


こっちの方が気が楽やな。



俺は、空いている美沙の横に座った。


「准、変なこと言わんといてよ」


美沙は声をひそめて俺に言うのを、向かいに座る母さんたちが見逃すわけがなかった。


「あら、准と美沙ちゃん仲いいんやね」


「ほんま、なんか親密な感じやね」


・・・親密って。


お前らが罠をしかけたんやろ?


ニヤニヤしながら言う二人に対して、美沙は冷静に対処をしていた。


「そう?前とそんなに変わってないよね〜?」


と俺の顔を見ながら・・・。


いかにも『仲がいいです』と言わんばかりに・・・。


「あ、あぁ、変わってないよ」


最悪や・・・偽装恋人の話を持ち掛けた俺の方が動揺してるし。


「そう?私たちは、美沙と准くんが付き合ってくれたら嬉しいんやけどなぁ」


出たよ!本音が!


しかも父さんたちも嬉しそうに頷いてるし。



「お、お母さん!」


真っ赤になりながら両親の暴走を止めようとする美沙の顔は少し赤くて、本当に照れているようにも見えた。


でも、偽装恋人やから・・・演技やんな。


そう考えると、なんとも言えない喪失感なような物が生まれてくる気がした。