「結局、俺の罠は失敗に終わったんやな」


「はぁ?罠?」


健吾が笑いながら言っている意味がわからなくて、眉間にシワを寄せて聞いた。


「あのクッキーにまつわるジンクスは嘘やったんや」


「あれ、嘘やったんか?」


「そんなに簡単に両想いになんかなれるかよ」


目を逸らしながら言う健吾の表情はどこか寂し気だったが、俺は深くは考えなかった。


「少しでも准のモチベーションが上がってさ、告白でもできたらいいなと思ってな」


「そっかぁ」


へぇ・・・こいついい奴やん。


「でも、告白ができなかったとは、作戦失敗やな・・・」


「というか、俺、まだ告白するつもりないし」


告白したけど、寝てたから聞こえてないなんて言われへんし。


「オカンの思う壷になるからか?」


「あぁ」


もうそんなこと考えてないよ・・・。ただ単に・・・フラれるのが怖いんや・・・。


「そんなこと言ってたら、他の男に取られるぞ!・・・俺とかな」


「はいはい」


健吾の冗談を軽くかわし、再び机に突っ伏した。


「いい加減、くっつけよな」



その言葉は届いていたが、反応することはなかった。