「先輩早く帰りましょうよ」


「わ、わかってるから!」


夏休み。


バスケ部の部長を務める私、田中美月中学二年生は、体育館の鍵を閉めるのに苦戦していた。


「…ああ、もう」


痺れを切らした男子バスケ部の後輩で同じく部長の、東雲薫が鍵をうばい私の横にしゃがんだ。


東雲くんの、ふわふわしてる髪の毛が汗で軽く濡れている。


なのにシャンプーの匂いがして。


シーブリーズをバンバン塗っている自分が、いたたまれなくなった。