「何処、行ったのかなぁ――」


「こっちの方で見かけた子がいたよ――」


「あっ、そっちに入ったら迷っちゃうから――」




周回路から、風の音に混じり、ルナを探す複数の声が聞こえる――。




「ここには来ないと思うけど、秘密の場所知られたくないから私、もう行くね――」


「それと、彼女達がいる時は冷たい表情をテルくんに向ける事になるけど、その――本心じゃないから――」


彼はルナの事情を理解し、軽くはにかみ、頷く――。



「ここに来られるのは昼休みだけかな、放課後は部活動があるから――」


「わかった――」


「話せて嬉しい――じゃあ、行くね――」


「またな――」


ルナは、静かに立ち上がり、慎重な足取りで周回路に向かう――。


途中、広場と針葉樹の森の境界で振り返り、少し照れの要素が含まれた瞳で彼を捉え、愛らしく手を振り、長く艶やかな髪をなびかせながらくるりと反転して、森の中へ消えてゆく――。




マリネ達の懸念は、杞憂に終わった――。


ノアーク―エリザベート―ルナは、綺麗で、繊細で、無垢で、優しく、可愛い、女の子だった――。