一瞬、世界中の音が消えた。
彼女の声しか、聞こえなかった。
「ほ、本当に?」
思わず声が震える。
真比呂さんは、真っ直ぐにオレを見つめて、頷いた。
「私……一目惚れだった。
広野くんを初めて見たときに、この人だって、思ったの。
それからずっと、窓際に座る広野くんを見つめてきた。
だから、シャーペンと消しゴムを貸してくれたのが夢みたいで……。
舞い上がって手作りお菓子とか作っちゃって。
あのとき、私本当は広野くんが好きって言いたかったのに、逃げちゃって……。
意気地なしだね、私」
眉を下げて笑う彼女に、オレは首を振った。


