「身体は大丈夫か?」

さっきとは打って変わった政宗さんの優しい口調に、驚きながら顔を上げる。

「大……丈夫です。って私なんかのことより、政宗さんこそ大丈夫なんですか?」

「何が?」

本当にわからないのか、不思議そうな顔をする政宗さん。

自分のことなのに分かってないの?

政宗さんから帰ってきた言葉に眉根を寄せると、ゴルフグローブを付けている左手を掴んだ。

「親指付け根の関節炎、まだ完治してないですよね? 今無理して、その怪我が悪化したらどうするんですか?」

ここが試合会場で大勢のギャラリーがいる前だということも忘れて詰め寄ると、政宗さんは驚いた顔を見せた。

「柚子、おまえ……」

せっかく試合に出たというのに、私はなんてヒドいことを言ってるんだろう。でも今は政宗さんの身体のほうが大切。

もっと自分を大切にして──

その気持ちが届くように、目を見つめたまま政宗さんの左手を両手で包み込む。

でもその思いが通じなかったのか、政宗さんは私の手をどけてしまう。

そうだよね、私の気持ちなんて政宗さんに届くはずないよね。

自分のしたことが恥ずかしくなって、目を合わせていられない。

なんか悲しい……。

このままじゃ涙が出てしまいそうで無理に笑みを浮かべると、スッと伸びてきた政宗さんの右手が私の顎をグッと掴みあげた。