五つの顔を持つ私





「失礼します」

ガチャ

「先ほど、麗子様からお電話があり、帰国されたと」

「…は!?」

嘘…。

「いつ?」

「…すでに」

まさか…。

キキー バン

…遅かった…。

「早くお迎えにいかなくては!!」

ウィーン チン

パタパタパタ

ま、間に合った…。

「「「「おかえりなさいませ、麗子様」」」」

機械的な使用人達の声。

「ただいま」

ニッコリ造られた笑みを浮かべた綺麗な女性。

「おかえりなさいませ、お姉様」

「あら、麗じゃない!お久し振り」

「お久し振りでございます」

この人は黒木財閥の現社長 21歳。

そして私の…姉。

「みなさまもお久し振り」

「「「お久し振りでございます、麗子様」」」

この方は、仕事で外国を回っていてついさっき帰ってきたばかり。

「あら?美麗も帰国したと聞いたけど?」

…どっからそんな情報仕入れてくるの?

「申し訳ありません、美麗はただいま不在でして…」

「まぁ!不在ですって?私(わたくし)事前に連絡しておいたわよね?」

「…連絡といわれましても…、ついさっき報告されたばかりでして…」

「連絡は連絡でしょ!!麗、私に口答えするつもり?」

相変わらず急で強引な人…。

ほんと自己中。

「申し訳ございません!!ただちに呼び戻しますので…」

…ギリ

上下関係が厳しい世界。

たとえ家族だろうと私が一番下なのは変わらない。

目上の者には敬意を払うのが礼儀というもの。

…と、私達は教育された。

気がつくと姐様は楽しく談笑しながらリビングへと移動していた。

その間に美麗に電話する。

ブルルブルル ピッ

「もしもし、美麗?私よ」

『ああ、』

「緊急事態よ。麗子姐様が帰ってきた」

『…は?』

「至急帰ってきて。麗子様がお怒りよ」

『だろうな。わかった。今すぐ帰る』

電話を終えて、私はふぅ、と天を仰ぎ見た。

空は私の心とは対象的に雲一つない晴天だった。