私はかなり驚いた顔をしていたのだろう。
「そんなに驚かなくても…。」
と美桜に言われてしまった。
「話を続けますね。」
と、美桜。
それに私は頷いた。
「私があなたをここに連れてきた本当の理由を話します。
私はもともとここの時代の人間でした。
あなたをここに連れてきた表向きの理由。
それは、いずれわかるとあなたには前に言いましたよね?
あなたは三上柚希に裏切られた。
少なからずとも、あなたは人を信じることができなくなったはずです。
玖龍グループの三代目跡取り玖龍美奈。
それを聞いただけで、周りからは敬遠されていたあなたに、唯一手を差し伸べた人物に裏切られたんですから。」
「いやっ!!
もう、それ以上言わないでぇ…。」
私はいままで秘めていたことをどんどん美桜に暴かれていくのが嫌で、耳をふさぐ。これ以上、私の心の傷を抉らないでと言わんばかりに。
それを見た美桜は怪しく微笑んだ。
この人、怖い…。
私は初めて美桜に対して怖いという感情を抱いた。
親にでさえ、この玖龍グループをつなげていく道具でしか見られなかった。
そう、両親にとって私はただの道具でしかない。
たった一人の友達にも裏切られた私は、美桜の言ったとおり、世の中に減滅していた。
私を必要としてくれる人がいない今、このまま死んでしまってもいい。階段から落とされたとき、そう一瞬思ってしまった。