文久三年五月十日
私は今日、初めて京の街を巡察している。
初めてというのは、今まで外出禁止令が出ていたことから、八番隊の隊務に参加できなかったのだ。
「まぁ、いくら幹部の人たちに勝ったからと言ってすぐに出してもらえるわけない、か…。」
「美奈、今なんか言った?」
と藤堂さん。
「あっ、何でもないよ!!」
いけない、いけない。つい独り言が口に…。
まぁそりゃそうだよね。いくら巡察だからって、たかが巡察されど巡察。いつも命がけなんだよなぁ、この時代って…。
私は、今はまだ実感がわかなかった。
実際に殺されかけたことはあっても、殺される人をみたり、人が誰かを殺したところなんか見たことがない。
あの時は沖田さん、全員峰打ちで浪士たち捕縛してたし。
だからだろうか。美奈はこれから起こることを予想だにもしていなかった。
その時までは…。