お店の人が持ってきたものに、私は目を奪われた。
綺麗な紺地に、裾の方に桜の花が施されている着物。
私が目を奪われていると、
「二着ずつ選べ。」
そう土方さんに言われた。
私が選んだものは、目をひかれた紺地に桜のものとお店の人が勧めてくれた桃色のシンプルなもの。
袴は、私が決めかねているところに、変なものを選ぶと困るからと土方さんが選んだものを買った。
上が紺でしたがグレー、もう一つも、下はグレーだけど、上は黒。
当たり障りなく、私にも着れるものを選んでくれた。
あとは、浅葱色の羽織二着。
土方さんが勘定を済まして店から出てくると同時に、私は土方さんにお礼を言った。
未来から来た私は、もちろんお金を持っている訳ではない。
だから、土方さんが気を使ってお金を出してくれたのだ。
感謝の意を込めて、私に今できるお礼を精一杯する。
「土方さん、本当にありがとうございました。」
「別に気にすることねぇ…。
その分、しっかり働いてくれれば、それでいい…。」
ぶきっちょな言い方でかえされて、私はクスッと笑う。
土方さんには、ばれないように。
土方さんの、隠れた優しさが少し見えた気がした。