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「土方さん、美奈です。」
「入れ。」
私は襖を開け、部屋の中に入る。
「で、平助は…?」
中には土方さんだけではなく、幹部の皆がいて心配そうに私の顔を覗き込む。
「平助君が目を覚ましました。」
とびっきりの笑顔で皆にそう伝える。
すると、皆は飛んで喜んだ。
土方さんと近藤さんは肩を抱き合って泣いている。
「今はまた眠りについています。」
そうつけたし、私は土方さんの部屋を後にした。
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数日後。
「みーなぁー!!」
「はいはい、何?平助君。」
「いや、呼んだだけ!!」
「もうっ!!」
平助君は何も後遺症もなくまた普段の生活を取り戻しつつある。
ただ、まだもう少し額の包帯をとるには時間がいるようで、痛々しい傷は一生残るらしい。
池田屋事件はこうして幕を閉じた。
結局、史実は変えることができなかった。
奥沢さんや新田さん、安藤さんの死。
そして、総司もあの夜、労咳ではなかったものの倒れてしまった。
平助君も三日三晩眠り続け、今に至る。
時渡りをしてきた平成少女。
美奈の存在は歴史に残ることなく、また、時代の渦に飲みこまれていくのであった。
- END -