勝手場に向かう途中、建物の物陰で隊士たちが集まって何かをしているのが見えた。
何をしているのだろうと思い、罪悪感を感じながらも物陰に隠れて様子を伺う。
「お前、南部の子守と何かあるんだろう?」
「そうじゃなきゃあ、あんな女の腹なんかふくれねぇもんなぁ。
あんな醜い女の親しい男なんてお前ぐらいだろう。」
「そうだ、そうだ。
お前、あの女とヤッたんだろう?」
そう言って下品に笑う隊士たち。
その隊士たちに囲まれているのは、確か馬詰柳太郎とかいう男。
彼の父と入隊してきた人。
この人、新選組の美男五人衆の一人。
それなりにイケメンが揃っている新選組の中でも、イケメンと言われている人。
まさにイケメンの中のイケメンだ。
それにしても、南部の子守女ってあの色黒で短身、ちぢれ毛でとても醜い女だと言われている人。
実際に本人を見たことがない私は何とも言えないけれど。
すると、隊士たちが歌を作り始めた。
「南部の子守のお腹がふくれた 胤(たね)は誰だろ 馬詰のせがれに 聞いてみろ 聞いてみろ」
そう言って、隊士たちはその場を後にした。
「はぁ、くだらない。」
そう呟いて彼の方に視線を向ける。
彼は悔しそうに唇を噛みしめていた。
馬詰さんはまぁ、お父さんは剣の腕があんまりで隊士たちに使い走りにされていた。
そして息子もこのような状態。
親子そろってとても可哀そうだ。
私は彼を見ていられなくなり、その場を後にした。

