「はぁぁぁ…。」
美奈は大きくため息をついた。
「なんや、えらい大きなため息ついて。」
後ろから声をかけられる。
この独特ななまりと口調は
「山崎さん、覗き見なんて趣味がお悪いですね。」
私は振り返り、山崎さんを睨む。
彼は私が姿を眩ましたころに入隊した山崎烝。
私が大坂に行っていたころに入隊した島田さんと共に監察方である。
彼は私が睨んだからか、肩をすくめ、「すまんすまん。」と笑った。
「山崎さん、御用はなんですか?」
「そやなぁ。
なんだったっけかなぁ…。」
「山崎さん、ふざけるのも大概にしてくださいね?」
「ははっ、すんまへん。
藤堂組長がお呼びでっせ?」
「平助君がっ?
山崎さん、ありがとうっ!!」
そして、美奈は勢いよく走り出す。
「あっ、玖龍はん、お待ちください!!
場所、わかるんですかーっ!!」
山崎の言葉が宙に木霊する。
それでも、美奈は聞こえなかったらしく、そのまま走って行ってしまった。
「なんや、場所わかるんか?あいつ。」
そんな呟きがあったことを美奈は知らない。