私が呆然として座っていると、一人の女の人がこちらへ走ってきた。
「せ、芹沢はんは、どこどす!?」
そう言う彼女はとても綺麗だった。
一目でわかった。あぁ、この人が芹沢さんを愛したお梅さんなんだ、と。
「芹沢さんは、ここにいます。」
そう言って、私は芹沢さんの居所を彼女に教える。
後ろでは山南さんと原田さんの
「すまねぇ、とめれなかった。」
という声が聞こえる。
彼女は冷たくなりつつある芹沢さんの体を抱き上げて、必死に呼びかけていた。
必死に呼びかけているお梅さんを見ていると、あぁ私はこの人の大切な人を殺してしまったのだと、改めて思う。
そう思うと、涙が流れはじめた。
「お梅さん、芹沢さんが…」
「聞きとうないっ!!」
言葉を遮られても、言葉を続ける。
「芹沢さんが、最期に、お梅さん、あなたを愛していたと言っていました。」
その言葉を言うと、彼女は大粒の涙を流しだした。
「…だから、ききとうなかったんよ。
そんな言葉聞いてしもうたら、芹沢さんから離れられなくなる。
―――芹沢はん、今そっち行くから待っててやぁ…。」
そう言って、彼女は懐から出した小刀で、自分の命をあっけなく絶ってしまった。
唖然とする。
お梅さんすら守れなかった。
ただ見ているだけで何もできなかった。
「うそ、でしょ…?」
そう呟き、自分の手を見つめる。
私は何のためにここに来た?
何を芹沢さんに頼まれた?
芹沢さんはお梅さんの死ではなくて、生を望んでいたんじゃなかったの?
私は、一体何のために…。
そう思い、我を失って走り出した。
「わあああああああぁぁぁぁぁぁっ」
嫌だ。嫌だ。
何の為にここに来たのよ。
後ろで誰かが叫んで私を呼んでいても、私には聞こえていなかった。

