「はぁ…。俺自分の席戻ってる。」
そう言って僕はその場を後にした。
「いやぁ…。まさか平助が気づかなかったとは…。」
という近藤さんが呟いたのを僕は知らない。
僕は自分の席に戻る。
総司の席でいまだに酌をしている美奈には気づいていないふりをして、「美雪さん、酌して?」と声をかけた。
美奈は「はぁい。」と返事をし、近くに来る。
しばらく無言が続き、僕は耐え切れなくなって口を開いた。
「ねぇ美雪さん、美奈って女の子知ってる?」
美奈は僕の口から自分の名前が出たからか、大きく肩を揺らした。
「し、知りまへんなぁ。」
と少しどもりながら答える美奈はおもしろい。
必死に隠そうとしている。
「藤堂はん、美奈はんてゆぅ方は藤堂さんにとってどんなお方なん?」
「ん?美奈はね、綺麗でかわいくて…。」
と藤堂が答えていく。
「それでもってね、僕より強いんだ。
美奈とは恋仲なんだけどね…」
とどんどん藤堂は美奈を前に言葉を並べていく。
そのとき美奈は、自分で質問したにも関わらず、藤堂の答えにどんどん赤面していっていた。
「―――ねぇ、美奈?」
と藤堂。
美奈は恥ずかしさで気を緩めていたためか、条件反射で「はい、なんでしょう?」と答えてしまった。
それを聞いた藤堂はくすくすと肩を揺らしながら笑っている。
気づいた時には時すでに遅し。
「平助君、いつから気づいてた?」
と聞く。
「うぅんとねぇ…。
教えてあげない。」
と平助君はいたずらっ子のような笑みを美奈に向けた。