近くに行くと、火花がパチパチと飛び散っている中で、近藤さんと土方さんが誰かに「早く火を消してくれ!!」と必死に説得にかかっていた。


多分、あの二人に説得されているのは芹沢さん。




違うところに目を向けると、大和屋の店主だろうか。
涙を流し、赤々と燃える蔵を呆然として見ていた。
彼の目に生気がない。





私は気が付くと、芹沢さんのところに駆けだしていた。



「芹沢さんっ!!」


私が声をかけると、彼は満面の笑みで私を迎える。
近藤さんと土方さんは私を見るなり目を丸くして、「なぜ、お前がここに?」と言いたげな顔をした。


そんなのお構いなしに私は笑顔で芹沢さんに言う。


「芹沢さん、もう、屯所に帰りましょう?

そろそろ、夜は冷えてきます。

お体が冷えちゃいますよ?
芹沢さんに風邪をひかれては、皆さん困りますからね?」


「そうじゃのぅ。
それでは今日はもう屯所に帰るとするか。」



そう言って芹沢さんは、一派を連れて屯所に戻っていった。




平助君が事情を話してくれたのか、近藤さんと土方さんは申し訳なさそうに私に笑いかけた。



「さぁ、早く火を消しちゃいましょう!」



という私の一声で火消しの作業が行われた。



火消しの作業が終わり、途中から来た未来で言う消防士さんたちにお礼を言いその場で見送る。

私と平助君の後に駆けつけた近藤一派の面々と一緒だ。


人数が集まったおかげか、火消しの作業は意外と速く終わっていた。




皆で屯所へ帰る。




その時、近藤さんに

「今日は本当にすまなかった。

ありがとう。」

と言われ、私は恥ずかしくなり、「えへへ。」と言って俯いたのだった。




こうして、長かった相撲興業が終わり、芹沢さんの暗殺の決め手となる大和焼き討ち事件は幕を下ろした。