「土方さん…。」
私はその部屋の主に声をかける。
「玖龍、おめぇ、部屋入るときにゃあ名乗って相手が返事してからだって、ちゃんと教えただろうがぁって…どうしたんだ?その恰好。」
恰好?
私は自分の身なりを見る。
さっき平助君に押し倒されたときか、屯所内を走った時か…。
私の着物は着くずれしていた。
いや、たぶんこれは走ったのが着くずれの原因ではないな…。
「これは…その…。」
私は部屋に入ってから一度もまともに上げていない顔を上げて、周りを見渡した。
その部屋には、総司と左之さん、永倉さんもいた。
よりによって…。
愚痴のはけ口にする人、間違えちゃったかな…。
計算外だった人物たちに私は混乱する。
「美奈、何があった?」
と左之さんが聞いてくる。
その優しい、どことなく安心する声に、私は部屋に入る前に止まりかけていた涙が、また溢れ出した。
私は一言一言言葉を紡ぎだして、さっきあったことを話し出した。
全てを話し終えると、
「僕、平助を殺しておきますね。」
と沖田さんが笑顔で言う。
「こ、殺すのはやめてください!!」
私は、沖田さんにお願いする。
「なんでですか?」
総司に聞き返される。
「自分の身は自分で守らないといけない。
今回のことは、私が悪かった。
それで、納めてください。
お願いします。」
私は頭を下げる。