私は恐怖で出なかった声を、やっとの思いで絞り出した。



「…や、だ…。」


そして、いまだに私の首筋に顔を埋める平助君の体を押す。



怖い。
今の私には、それしか感じられなかった。


「平助君、やめて…。」



私は泣きそうなところを必死にこらえる。



やっと気づいたのか、平助君は私の体から自分の体を離した。



「ご…ごめん。」



平助君は私の顔を見るなり、謝ってくる。




怖かった。
私はその場から去りたい一心で部屋を飛び出した。




平助君が私の名前を呼ぶのも無視して。







私はひたすら泣きながら屯所内を走る。

向かうのはただ一つ。
私が信頼している人のもと。


の部下。



私が信頼している人は、今日は出かけている。







その部下の人の部屋の前に来る。
途中私の横を数人、隊士が通り過ぎた。

見る人皆がどうしたんだというような視線を投げかけてきたけど、そんなのお構いなしに走ってきた。




私は、思いっきり襖を開けてその部屋に転がり込んだ。