「ねぇ平助君。」


部屋に戻る途中、ふと平助君に話しかける。


「ん?なんだ?」


「あのさ、さっきの部屋のことどう思う?」


「まぁ、総司の策略だろうな。」


「やっぱり、そうだよね。」



「…なに。美奈は俺と二人部屋なの嫌なわけ?」


「へ…、いや、別に…。」


「別に、何?」


平助君が、拗ねたような顔をして私の顔を覗き込んでくる。



そんな可愛い顔で覗き込まないでほしい。
自分が可愛くないのが思い知らされるから。


「そんな顔して見ないで…?
私、耐えらんなくなる…。」


私は顔を真っ赤にして平助君に言う。


平助君の顔を見ると、なぜか真っ赤だ。
平助君、熱でもあるのかな?

最近、いくら夏とはいえ、夜でも外でいつも私の帰りを待ってくれている平助君。
私のせいで平助君が風邪をひいてしまったのかもしれない。




「平助君、顔赤いよ?
風邪でもひいた?
熱あるんじゃない?」



そう言って、私は平助君の額に私の手を当て、自分の額の温度と比べる。



う~ん。ちょっと、わかんないかも。
現代では体温計使ってたから、手で熱計ることなんてなかったしなぁ。



「手じゃ、わかんないね…。

平助君、ちょっと屈んでもらってもいい?」


私はそう伝えると、平助君が額に当てている手をぐいっとひぱって、私を抱きしめた。